高校で男子しかいない柔道部に入部して全国7位にまでなった「マザーハウス」代表兼チーフデザイナーの山口絵理子氏、元事件記者で当時の上司に「職場はファッションショーじゃない」と注意されても自分のスタイルを変えなかったファッション業界紙「WWDJAPAN」編集長の村上要氏、東京五輪開会式で「君が代」を歌ったMISIAの衣装を作った「トモ コイズミ」デザイナーの小泉智貴氏、ルームウエアブランド「ジェラート ピケ」を常識破りのファッションフロアで展開したマッシュホールディングス社長の近藤広幸氏、「ルイ・ヴィトン」「ロエベ」といった世界のトップブランドもオーダーするテキスタイルデザイナーの梶原加奈子氏、ユニークなZINE(個人が自主製作する冊子)を作り続けるビームスのサーフ&スケートブランド「SSZ」ディレクターの加藤忠幸氏、産地とのコラボレーションを仕掛ける「ビームス ジャパン」ディレクターの鈴木修司氏、一度は却下されたファッションのサブスクリプション(定額課金)サービスを諦めずに実現した大丸松坂屋百貨店の「アナザーアドレス」事業責任者の田端竜也氏という8人だ。

各人のエピソードが非常に個性的で興味深いのだが、共通しているのは「アパレル愛」にあふれていること。その熱量を持ち続け、さまざまな障壁がある中で、いかに自分のやりたいことを実現するかを必死に考え、実践してきたのだ。

破天荒なくらいの「やんちゃさ」があっていい

川島氏自身も幼い頃から服が好きでファッション業界に入ったものの、外から見ていた業界と現実とのギャップに直面した。ただ、ファッションにはそれらを上回る魅力があり、時代の動きをとらえて服として具現化すること、そして着た人やそれを見た人の気分を高揚させる力があることだという。

そのうえで、「新しい道を切り開くには、破天荒なくらいの『やんちゃさ』があっていいし、もともとファッションはそういうところから始まっていた。新しいことに果敢に挑む人は、無理解だった周囲を巻き込んでいく意志や常識の枠組みを越えていく行動力に満ちている。多少の壁があっても、『好き』や『愛』があるから、とんでもないエネルギーを発揮して乗り越えていく。その姿には潔さやすがすがしさがあり、この業界の原点はここにあると思った」と締めくくっている。

アパレル業界に限らず、ビジネスの世界では客観的データによって導き出される“正解”を追い求めがちで、主観的な“好き嫌い”は持ち込むべきでないものとされてきた。しかし、データの前提となる社会環境が変化し続け、正解を導き出すのが難しい中、個々人の「好き」という感覚やその熱量を生かすところに未来が開けるという考えは、多くのビジネスパーソンのヒントになるのではないだろうか。

(日経BP 山下奉仁)

アパレルに未来はある

著者 : 川島蓉子
出版 : 日経BP
価格 : 1,760 円(税込み)