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「シウマイ弁当」で有名な崎陽軒(きようけん、横浜市)は、知名度の地域差が大きい。首都圏の人にはおなじみだが、西日本ではそうでもないという首都圏ローカルな存在だ。あえて店舗を全国に広げない背景には、地域に根付いたビジネスを選んだ決断があった。「横浜名物」を深掘りする理由や、メニュー・業態で横展開する狙いを、野並直文社長に聞いた。(前回の記事駅弁の絶対王者 横浜・崎陽軒『シウマイ弁当』の秘密」

「シウマイ弁当」は関東では圧倒的な知名度を誇る。しかし、西日本では名前は聞き知っていても、食べたことのない人は珍しくない。公式ホームページの「店舗一覧」を見ると、崎陽軒の店舗があるのは、地元の神奈川県のほかには東京都、千葉、埼玉、静岡県と台湾だけ。国内は静岡より西には店舗がないのだ。

「シウマイ弁当」を表現したクッション

「シウマイ弁当」を表現したクッション

「シウマイ弁当」を買うと、「本日の夜10時までのお召し上がりでおねがいします」といった具合に、消費期限を言い添えられる。弁当のシール部分にも消費期限が明記されている。野並社長も「早めに召し上がってほしい」と言う。シューマイに保存料や化学調味料を使わない製法だから、鮮度が大事だ。鮮度を保つには、工場との距離が重要で、工場のない西日本には店舗も構えにくい。

過去には首都圏の工場で製造したシューマイをパック商品の形で全国で販売したことがある。1967年に真空パック入りタイプを発売。全国の百貨店やスーパーに「崎陽軒」のシューマイが並んだ。ちなみに、「真空パック」を商品名として初めて使ったのは、同社だという。

しかし、2010年代の初めに全国規模での販売を打ち切った。現在は通信販売の形で首都圏以外への配送を受け付けている。全国展開をやめた理由を、「シウマイがかわいそうだから」と、野並社長は語る。当時はスーパーで販売員を置かないセルフ扱いでワゴン販売されることが多かった。ほかのそうざい類とごちゃ混ぜ状態で並べられたり、トイレ脇のようなスポットに置かれたりすることもあり、「ブランドにマイナスと感じた」(野並社長)。

「横浜名物」として誕生したのに、全国で売られるようになった結果、みやげの価値が薄れたのも一因だ。知人が横浜でみやげに買って、田舎に帰ると、近所のスーパーで売られていてがっかりしたといった話も聞かされ、「目が行き届かない売り方はだめだ。ブランドを傷つけてまで全国販売にこだわる必要はない」と判断した。

しかし、売り上げの規模がかなり膨らんでいたことから、社内では営業部門で反対の声も。取引先にも丁寧に説明する必要があり、「約3年をかけて全国販売から手を引いた」(野並社長)。

ローカルブランドを目指すきっかけになったのは、大分県で「一村一品」運動を起こした平松守彦知事(当時)の言葉だった。「真にローカルなものは、インターナショナルにもなり得る」という趣旨のメッセージに意を強くした。

創業100周年を迎えた08年には新たな経営理念を掲げ、「崎陽軒はナショナルブランドを目指しません」とうたった。ローカルに徹する姿勢を社の内外に宣言した格好だ。横浜の街に根を下ろし、地域の食文化と共に歩む姿勢は市民に受け入れられ、1世帯あたりのシューマイ購入額で横浜市がぶっちぎりのトップを走り続ける理由にもなっている。

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