酒以外の食べ物はチャージ無料で持ち込みOKのバー

そのまま2階へ進む。モダンな内観が特徴的な「楽観(らっかん)」が現れる。一見おしゃれな今時のラーメン店だが、おすすめの「特製琥珀(こはく)」(本記事冒頭の画像)を食べて軽く衝撃を受ける。透き通ったしょうゆベースのスープと、するする入ってくる歯切れのよい麺はほかで食べたことがない上質な味わいだ。
江戸時代から木桶で仕込む茨城産のしょうゆに、タマネギやニンジンなど野菜のだしを加えて作る。副社長の村田裕さんは特段のラーメン修業はせず、この味を独学で研究し生み出したと聞いてさらに驚いた。
「日本のラーメンを世界に広めたい」を目標に、11年に東京・西麻布に開業。土地柄、外国人客も多かったため反応を見て改良を重ね、今では米国のロサンゼルスやテキサスにも展開している。海外の出店で得たデザインを日本の店舗に持ち込み、今の形に仕上げたそう。ラーメン好きは一度訪れてほしい。午前11時頃から行列ができ始めるのでピークをはずしていくのがオススメだ。

おなかがかなり満たされたところで、その向かいの「Bar FAIRGROUND(フェアグラウンド)」へ。ミカン下北内で唯一、酒をメインに提供する店だ。
元は下北沢で30年以上営業していた地元の老舗バーで、同店のオーナーが大好きなデザートワインとモルトウイスキーを多数取りそろえる。「甘いデザートワインで甘いスイーツを楽しむ」というコンセプトを打ち出している。
シモキタらしく肩ひじ張らずに気軽に通えるバーだ。昼の12時から夜まで通し営業し、店内でスイーツも提供するが、酒以外はどんな食べ物もチャージ無料で持ち込みOK。客はギョーザやウナギ、スーパーで買ったノリ巻きなどをつまみに自由に酒を飲む。常連客も「インスタグラムを見て知った」という20代前半の男性から、元のバーの馴染み客だった70代のシニアまで幅広いという。
併設のワインショップも初心者に優しく、ワインに添えられた手書きの説明を読むと楽しくなる。
下北沢は筆者の高校・大学の通学路にあり、30年以上前から知っている街だ。なじみの場所が変わるのはさみしいものだが、ここでは当時の“シモキタ感”を残しながらも今の時代に合わせた進化を遂げ、変わらず老若男女に愛されているのが素晴らしい。再び、次の30年も通ってしまいそうだ。
(フードライター 浅野陽子)