昭和が懐かしい下北沢 令和に引き継ぐ「ミカン下北」

「ミカン下北」オススメ店舗の1つ「楽観」のラーメン

下北沢が大きく変わりつつある。下北沢は、京王電鉄・井の頭線と小田急電鉄・小田急線が交わる下北沢駅周辺を指す。住所で言えば、世田谷区の北沢と一部の代沢あたりだ。渋谷からも新宿からもアクセス抜群、世田谷区の閑静な高級住宅地にありながら大衆居酒屋や古着屋が似合う、不思議な街だ。昭和の時代から「シモキタ」の愛称で親しまれてきた。

2013年には長年の“開かずの踏切”問題が小田急線の複々線化による地下化で解消され、話題を呼んだ。そして今、下北沢が再び注目されているのをご存じだろうか? 駅直結の高架下に新施設「ミカン下北」が22年3月に誕生したのだ。

“ミカン”は果物のみかんではなく、「永遠に完成しない(=未完)」の意味だ。キャッチコピーは「ようこそ。遊ぶと働くの未完地帯へ。」。飲食店や物販店、コワーキングスペースもある複合施設だ。

ミカン下北は京王電鉄・井の頭線の高架下を活用した新商業施設

「ミカン下北がある場所は、京王電鉄の土地です。10年以上前に小田急電鉄さんの複々線事業が立ち上がった頃から我々のプロジェクトも始動しました。ジャンルや世代を超えて多様な人が集まる、下北沢特有の面白さを共有していただけるテナントさんを探しました」(京王電鉄の広報担当者)

未入居のテナントもあり、今後も新たな開業が進むが、飲食店は12店が営業中で(22年5月の取材時点)、早々に昼夜人があふれている。その中からグルメクラブ読者におすすめの5店を紹介するべく、さっそく歩いてみた。

まずは下北沢駅を降り、東口へ。井の頭線の線路の下にミカン下北の入り口がある。独特の「シモキタ的雑多感」がそこはかとなく漂い、ワクワクしてくる。平日も午前中からすでに外まで伸びる行列ができていた。

ベトナム屋台料理を出す「チョップスティックス」の生麺フォー

1店目は「チョップスティックス」だ。ベトナム料理の店で、「日本初の生麺フォー」をウリに03年に高円寺に出店、17年には恵比寿にバインミー専門店を出し人気を博した。

ミカン下北では、この生麺フォーとバインミーを中心に、ベトナム屋台飯を提供している。パクチーや野菜たっぷりのフォーと生春巻きに、おしゃれなアジアンムードあふれる店内はいかにも女性好みだ。オープン前の午前11時台から続々と客が並び始める。

「ベトナムで買った布地を椅子に貼り付けるなど、ベトナム人のスタッフと手作りのアンティーク感を出しました。また、ビアホイ(ベトナム版居酒屋)を再現し、幅広い年代の方に支持されています」(店長の秋村幸太郎さん)

一番人気だという「蒸し鶏のフォー」は優しい口当たりだが、もちっとした米麺が濃厚な鶏だしとからみ、あとを引く。30~40代とおぼしき女性が手慣れた様子で右手に箸、左手にスチールのれんげを持ち、コムガー(ベトナム鶏飯)を口に運んでいたのが印象的だった。

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