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答えと解説

正解は、(2)十分に加熱した魚であれば問題ない です。

食中毒の発生状況は年によって異なりますが、近年、件数ベースで最も多いのは、アニサキスという寄生虫が引き起こすアニサキス症です(図1)。

図1 2021年に発生した食中毒の原因物質

寄生虫が半分近くを占め、次いで細菌が多い。寄生虫はそのほとんどがアニサキス(344件)で、細菌ではカンピロバクター(154件)が最多となっている。なお、患者数ではノロウイルスによる胃腸炎が圧倒的に多い。(出典:厚生労働省「令和3年食中毒発生状況」)

アニサキスは線虫の一種で、体長は2〜3cm程度。肉眼では白い糸のように見えます。サバ、アジ、サンマ、イワシ、ヒラメ、サケ、イカなど、多くの魚介類の内臓に寄生していて、これらの魚が捕獲されて鮮度が落ちると、筋肉(刺し身などで食べる身の部分)の方に移動していきます。

アニサキスが寄生した魚を生で、あるいは冷凍や加熱が不十分な状態で食べると、アニサキスが生きたまま人の胃の中に入り込み、そこで動き回って胃の壁に入り込もうとします。すると、粘膜に炎症が生じ、「胃アニサキス症」と呼ばれる食中毒を引き起こします。多くの場合、食後数時間から十数時間後に、みぞおちあたりの激しい痛みや嘔吐(おうと)が起こります。まれに腸の壁に刺さることもあり、その場合は「腸アニサキス症」と呼ばれます。

「胃アニサキス症の場合は、内視鏡検査で胃壁に入り込んだアニサキスを見つけて取り除くことが、診断と治療を兼ねた処置になります。腸アニサキス症の場合は、内視鏡での摘出は難しく、腸壁に入り込んだアニサキスを駆除する治療薬もないため、鎮痛薬などでの対症療法となります。まれですが、外科的な処置が行われることもあります」。埼玉医科大学総合医療センター総合診療内科・感染症科教授の岡秀昭氏は、そう説明します。

「アニサキスは人の体の中では長く生きられないため、数日で死んで体外に排出されます。症状が軽ければ受診しなくても自然に治りますが、腹痛や嘔吐が激しいときは、虫垂炎の初期や、胆石症、急性膵炎、心筋梗塞など他の病気と区別する必要もあるので、受診した方がいいでしょう」(岡氏)。

「シメサバなら安全」ではない 冷凍は-20度以下で24時間

アニサキス症を予防するには、どんなことに気を付ければいいのでしょうか。「アニサキス症を予防するためには、魚介の生食は避けるのが無難です。食べる場合は、できるだけ鮮度の良いものを選んで、内臓は速やかに取り除く。また、アニサキスがいる可能性の高い内臓は、生では食べないようにした方がいいでしょう。お酢でしめたり、しょうゆやわさびをつけたりしても、アニサキスを死滅させる効果はありません。実際、シメサバを原因とするアニサキス症が多く報告されています」(岡氏)

冷凍であればマイナス20度以下で24時間以上、加熱する場合は60度で1分以上、70度以上ならすぐに、アニサキスは死滅します。温度や時間が不十分だと死滅しないので、気を付けましょう。

アニサキス症の予防のポイント

■魚介は、マイナス20度以下で24時間以上冷凍するか、60度で1分以上か70度以上で加熱して、アニサキスを死滅させてから食べる
■魚介の生食は避けるのが望ましい。食べる場合は、鮮度の良いものを選び、内臓は速やかに取り除く
■内臓は生では食べない
*お酢でしめたり、しょうゆやわさびをつけたりしても、アニサキスを死滅させる効果はないので要注意!
この記事は、「激しい腹痛を起こす『アニサキス症』、新鮮な魚なら避けられる?」(田村知子=ライター)を基に作成しました。

[日経Gooday2023年1月4日付記事を再構成]

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