「質」「量」「リズム」で分かれる不眠のタイプ

・「心奪われ」不眠タイプ(図2)

「質」は低下しているものの、「量」は比較的取れており、「リズム」も安定しています。そのため、思っている以上に眠れている可能性が高く、日中も活動ができています。しかし、眠れていないのではという不安に心を奪われている状態です。この不安感によって活動自粛を引き起こしてしまうと、不眠症状が悪化することがあります。不眠症の中でも比較的多いタイプで、年齢層で言うとシニアの人々によく見られます。

このタイプの人は眠れないことへの恐怖感(不眠恐怖)に抗えず、夜は早く寝床に入ったり、眠れていることを確認するために何度も時計を見たりします。眠れなかったことによる体調不良を恐れ、活動を控え、悶々(もんもん)と眠りについて考え続けてしまうこともあります。

対策としては、寝床に入っている時間を6時間程度に短縮する、寝床に入ったら起床時刻になるまで時計は見ない、日中に中強度の身体活動を取り入れることが挙げられます。

・「心身不調」不眠タイプ(図3)

「リズム」は安定しているものの、「質」と「量」が低下している状態です。このタイプの人は、不眠感のほかに睡眠不足が加わるため、頭痛などの症状も出てきます。そのため、日中の活動にも支障が出て、パフォーマンスを十分に発揮できません。夜もなかなか眠れないので、おのずと活動自粛に入ってしまいます。働き世代タイプに多く、仕事過多から早朝覚醒してしまう人や、もともと睡眠が夜型傾向にあるにもかかわらず朝早く起きなければならないといった人にもよく見られます。

このタイプの人も不眠恐怖が根底にありますが、日中に頭痛などの支障が出てしまうため、日中はかなりつらい。そのため、睡眠薬を処方して眠りの「量」を増やすこともあります。

対策としては、「心奪われ」不眠タイプの方法に加え、身体のこわばりや緊張も関与してくるため、寝る前のリラクセーションや日中の身体運動を取り入れることも大切です。もともと睡眠が夜型傾向にある場合は、朝食をしっかり食べ、朝日を浴びる、寝る1時間前はリラックスタイムを導入するといった対策も効果的です。

・「アシンクロ(非同期)」不眠タイプ(図4)

「リズム」が不安定なところからくる「質」の低下が特徴です。一方で、寝不足と寝だめが繰り返されるので、「量」は全体的に取れています。このタイプの人は、仕事や課題への不規則な取り組みによって、体内時計のリズムを壊してしまい、不眠になってしまうのです。こちらは大学生や働き世代、シフトワーカーの人に多く見られます。

このタイプの人は、自身の生活スタイルに合わせて、就床―起床時刻をできる限り安定させることが重要です。例えば、2交代勤務でも日勤帯の時間で過ごすことが多ければ、夜勤をイレギュラーな日と考え、夜勤明けの休日なども含め、日中に積極的に活動するといいでしょう。毎日の3食の食事時刻をできる限り一定にするといった対策も考えられます。

もちろん、「質」、「量」、「リズム」がすべて低下した「フルコンボ」不眠もありますが、多くは上記3つのタイプに分類できます。

最初の質問の「『不眠症=眠れない』はずなのに、なぜ睡眠負債(寝不足)が減って不眠が増えるのか」ですが、上記の不眠タイプを見てもわかるように、不眠症の本質は「質」の低下であり、「量」(睡眠不足)は別の問題なのです。

また、ここでは挙げませんでしたが、急性不眠というのもあります。これは、ストレスによる一過性の不眠で、突如としてまったく眠れない日が1週間程度続きます。これは、からだからのSOS反応ですので、眠ることに躍起にならず、まずは休養を取りましょう。その後は徐々に眠れるようになってきます。

(参考文献)

1.岡島 義・秋冨 穣・村上紘士・谷沢典子・梶山征央(2021).新型コロナウイルス感染症禍での睡眠変化に関する検討:睡眠記録アプリ利用者を対象とした研究 認知行動療法研究、47(2)、83-92.

2.市川玲子・鈴木美穂・秋冨 穣・梶山征央・谷沢典子・岡島 義(2021).COVID-19による緊急事態宣言下における睡眠の諸特徴:宣言前後との比較検討 第94回日本産業衛生学会、ポスター発表

岡島 義(おかじま・いさ) 
東京家政大人文学部心理カウンセリング学科(睡眠行動科学研究室) 准教授。博士(臨床心理学)。日大文理学部卒、北海道医療大大学院博士課程修了。早大人間科学学術院助教などを経て2018年より現職。毎日8~9時間睡眠をとると快調だと気づき、夜9時に寝て朝5時ごろ起きる生活を続けている。

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