希少な東京ビーフを鉄板で 人と話したくなる会席の店極上の肉編① 若会席大和館

焼きたてのステーキを箸でいただく
大切な人と一緒に行きたいお店を選べるサイト「大人のレストランガイド」から、安心して通える「行きつけにしたい店」をピックアップして紹介します。 

東京都心のオアシス「日比谷公園」からほど近いビルの地下に店を構える「若会席大和館」。地下にありながら滝を眺められる個室があるなど、おこもり感と開放感が共存する不思議な空間となっている。看板メニューは日本料理と鉄板焼きのステーキだ。

ステーキは飛騨牛や米沢牛など、誰もが知るブランド和牛がそろっている。ただ、今回の取材のお目当ては約1年前からひっそりと提供している東京ビーフ。東京産の和牛など初めて聞く。がぜん興味をそそられた。

重厚なビルの壁を流れ落ちる滝が見える座敷

東京ビーフ生産流通協議会のホームページによると、東京都内で肥育され、最長飼養地が東京都内というのが東京ビーフの条件の一つ。現在のビルが立ち並ぶイメージとは裏腹に、昭和30年代半ばごろの都の畜産業は全国でも有数の規模だったという。人口増と都市化により急速に衰退したが、もともと素地はあったわけだ。

現在出荷されている東京ビーフは、主に伊豆諸島最南端の青ヶ島などで生まれた牛を八王子市など多摩地区の牧場が肥育したもの。年間出荷頭数は50頭前後とかなり希少だ。ホームページの「食べられるお店」をチェックすると、Coming Soonとなっており、東京ビーフを口にできる飲食店は非常に限られているのは間違いない。

土屋城久料理長に東京ビーフについて聞いたところ、開口一番「お客様にお出しできる部分が本当に少ないお肉です。ものによりますが、脂の部分など捨ててしまう割合が7割ぐらいのこともあります」と苦笑交じりに返ってきた。いわゆるコストパフォーマンスはあまり良くないようだ。しかしこれは、食べる側からするとマイナスではない。食べられる部位を増やすための人為的な工夫を、東京ビーフはあえて手控えているのではないかと土屋料理長はみている。

鉄板でステーキを焼く土屋城久料理長

「きちんと分析したわけではないですが、だからこそ、逆に味が良いのだと思います。人間の手を加えて『ビジネス化された』牛肉ではないのでしょうね。最近の赤身が好まれる時代の流れにも合っています。常連のお客様にお出しすると、『脂がさっぱりしてうまいね』とおっしゃいます」(土屋料理長)。東京ビーフは希少で流通も不安定なため、事前にお店に問い合わせてほしい、とのこと。

早速、東京ビーフを鉄板で焼いてもらった。

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東京ビーフ、そのお味は?