選手が活動に集中できる環境を
同プログラムを始めた理由について、Cygamesマーケティング本部eスポーツ室マネージャーの川上尚樹氏は、セカンドキャリアへの不安が選手活動に与える影響を挙げる。
「(18年に)『Shadowverse』のプロリーグが発足し、かなりの数の選手がプロ選手としてチームに参加してくれました。発足から3~4年もたつと選手の入れ替えも多くなり、引退の話も出てきます。『Shadowverse』は他のeスポーツタイトルよりも選手寿命は長い方だと思いますが、それでもプロとしてずっと活動できる選手は数少ない。将来への不安はどうしても付きまとうものだと思います。その不安を取り除き、選手としての活動に集中してもらうためにもセカンドキャリア支援プログラムが必要だと感じていました」
現在、eスポーツを引退した後の活動として考えられるのは、ゲーム動画配信のストリーマー(配信者)や大会の解説者などプロ活動が生かせるものだ。プロeスポーツチームのコーチやチームのスタッフ、eスポーツ大会の運営スタッフなどもそうだろう。ただし、ストリーマーや解説者は、一部のスター選手のみができる仕事であり、コーチやスタッフの枠も限られている。世間一般にも、eスポーツ選手はつぶしがきかない、将来は不安定という認識がある。
「そんな中で、プロ選手が『Shadowverse』に人生や生活のリソースをどれだけ割いてくれたのかと考えると、引退後について少しでも力になれるようにしたかった」と川上氏は言葉を継ぐ。
加えて、『Shadowverse』のプロリーグが定着する中で、Cygamesとしてプロ選手のセカンドキャリアを支援するだけの環境が整ってきたこともあるだろう。リーグを通じ、Cygamesはeスポーツ関連企業やPCメーカー、eスポーツ活動に力を入れている企業などとのつながりを増やしてきた。また、大会やイベントにかかわるプロ選手と接する中で、選手たちの分析力や思考力、集中力、コミュニケーション能力などが高いことも知っている。企業と選手の両方を見てきたからこそ両者をつなぐことができる、それであれば、Cygames自身がそのマッチングを行えばいいという考えに至ったようだ。
セカンドキャリア支援プログラムが常態化し、多くの選手が利用するようになれば、プロ選手が安心してプロ活動を行えると同時に、プロ選手を目指す次世代やその親に安心感を持ってもらうことにもつながるだろう。
実際、『Shadowverse』の世界大会である「Shadowverse World Grand Prix」で優勝し、1億円以上の賞金を獲得したふぇぐ選手やkakip(カキピー)選手も、プロ選手を目指すことに対して親の同意をしばらく得られなかったという。プロ選手を引退した後、就職するための支援プログラムがあることが、プロ選手を目指すための説得材料となり得る可能性はある。