パン・アキモトのパンの缶詰。パンを包む紙にもノウハウが詰まっている

今では国内外4カ国・地域で特許を取得

始めは焼いたパンを真空パックにしてみた。パンが傷む原因は主に菌類・微生物類の繁殖と、空気中に含まれる酸素による酸化だ。ならば、まずは空気を遮断してみようと考えた。しかし、パンを入れたビニール袋から空気を抜くと、パンは潰れてしまい、袋から出しても元のようにはならなかった。当たり前のことのように思えるが、実際にやってみないと分からないことだったのだ。

農産物加工所でタケノコを水煮し缶詰にしている様子を見て、パンの缶詰化を思いついた。缶ならパンが潰れることもなく、密封性も高いはず。さっそく焼きたてのパンを缶に詰め、1週間後に開けてみた。するとパンはカビだらけになっていた。空中を浮遊している菌類・微生物類が入り込んだからだった。

トライ&エラーの末にたどり着いたのが、パン種を缶の中で発酵させ、そのままオーブンに入れて焼く方法。オーブン内は高温だから、パンが焼けるのと同時に殺菌にもなる。ふくらんだパンが缶の内側に貼りつくのを防ぐため、特殊な紙を敷いたのも独自の工夫だった。パン・アキモトがパンの缶詰の発売にこぎつけたのは、阪神大震災から1年後の96年春のこと。これらの製法で同社は日本、米国、中国、台湾の4カ国・地域で特許取得に成功している。

飢餓に苦しむ国などに送られているパンの缶詰「救缶鳥」

パンの缶詰は発明品ともいえるほど画期的な商品だったが、すぐに売れたわけではない。もともと防災備蓄食と呼ばれるものは、「防災の日」など9月の防災月間などに注目されるが、それ以外の時期は一般的になかなか販売が伸びない。

しかし、パン・アキモトは地道に製造を続け、細かな改良を重ねることを怠らずにいた。2004年の新潟県中越地震や11年の東日本大震災など大規模な災害が発生するたび、パンの缶詰を無償で被災地に届けてきた。東日本大震災では岩手、宮城、福島の3県に計10万缶以上送っている。社長自らトラックのハンドルを握り、運んだことも少なくない。