売れて磨かれ…ファッションセンスは主役級
松重豊氏もドラマには欠かせない名バイプレーヤーの1人だ。光石研氏、遠藤憲一氏、田口トモロヲ氏らと組んだ『バイプレイヤーズ』では一番年下にもかかわらず、その貫禄から大杉漣氏亡き後のリーダー格でもある。
以前に『ニュースなルック』で光石研氏のファッションセンスのよさについて書いたが、不思議なもので役者という仕事は、売れて露出が多くなってくると、ファッションセンスもぐんとよくなる。いまや松重豊氏もドラマに映画にCMにひっぱりだこの売れっ子で、ファッションセンスも主役級のすっかりカッコいいイケオジになった。

どんな役でも仕事がくれば何でもこなせるのが名バイプレーヤーと呼ばれるゆえん。松重豊氏も悪役からコメディー、いいお父さんまで何でもこなしてしまう。警視庁のテロ防止のポスターに起用されたかと思えば、なんと深夜の5分間のミニドラマ『きょうの猫村さん』では着ぐるみを着て猫の家政婦まで演じている。
現在放送中のNHKの朝ドラ『カムカムエヴリバディ』では、三代目ヒロインの川栄李奈さん演じる大月ひなたが師匠と慕う、日本の時代劇を支えてきた大部屋俳優で、殺陣は一流の斬られ役、伴虚無蔵(ばん・きょむぞう)を演じている。いつも着流しで時代劇言葉を話す変わり者というキャラ設定だが、松重豊氏演じるこの役のモデルは、ハリウッド映画『ラストサムライ』でトム・クルーズとも共演した名斬られ役の故・福本清三氏じゃないかとネットでも話題になっている。
松重豊氏の名前が一躍知られるようになったドラマといえば、『孤独のグルメ』だろう。松重豊氏が演じる主人公の井之頭五郎が仕事で行った先々で“独りめし”を楽しむ、いまやシーズン9まで制作されている大みそかの紅白の裏番組にもなったテレビ東京系の人気深夜ドラマだ。もともとは、エッセイストで最近はミュージシャンでもある漫画家の久住昌之氏原作のコミックをドラマ化したもの。コミック版はフランスのカルティエの広告やルイ・ヴィトンのトラベルブックなども描いた漫画家の故・谷口ジロー氏が画を描いている。
孤独のグルメでは毎回松重豊氏の食べっぷりのよさが話題になっているが、実はスーツの着こなしも見逃せない。井之頭五郎はフリーランスの輸入雑貨販売という設定なので、松重豊氏は長身をいかして毎回きちんとスーツをセオリー通りに着こなしている。

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