日経Gooday

コロナ禍で気づいた「リアル」に参加できない人たちの存在

6月の初旬には、3年ぶりに開催された「信州安曇野ハーフマラソン」に、安曇野市スポーツ大使としてゲスト参加しました。初夏の気持ちのいい晴天の下、約5200人のランナーと約300組の親子が参加しました。私は開会セレモニーに参加し、久しぶりの大会を満喫しながら一生懸命走る皆さんを、大声は封印しつつ、応援させていただきました。

子どもたちに走り方を教えるのは新鮮ですし、教室や大会に出場した皆さんからは元気と笑顔をいただいて、リアルイベントならではの楽しさを久しぶりに実感しました。そんなリアルなイベントが戻ってきつつある世の中の流れはとてもうれしいことですが、その一方で、コロナ前のような、リアルなイベントだけの開催に戻ってほしくないなとも感じています。

なぜならこのコロナ禍で、主催者の創意工夫によってさまざまなオンラインイベントが生まれた結果、障害などさまざまな事情でリアルイベントには参加できなくとも、オンラインであれば参加できるという人がたくさんいることに私たちは気づいたからです。共生・共存や多様性、SDGsなどを掲げる社会の流れの後押しも受けて、これからは、リアルイベントとオンラインイベントを同時開催するなどの「リアル+α」がもっと生まれてほしい。どんな状況の人でも参加しやすい「+α」のアイデアを、スポーツのみならず、仕事やレジャーなどさまざまな場面で常に検討していく必要があると感じています。

2年連続で続く世界陸上 パリ五輪にどう照準を合わせるか

最後に再び世界陸上の話に戻りましょう。今回のオレゴンの地で、2025年世界陸上の東京での開催が決定するといううれしいニュースが届きました。かつて私も出場し、女子マラソンで4位に入賞した1991年の東京世界陸上や、2007年の大阪世界陸上に続いて、日本での世界陸上開催は3回目になります。世界陸上は2年おきに開催されますが、今年の世界陸上はコロナの影響で1年遅れの開催となったため、次回は来年2023年にハンガリーのブダペストで開催されます。その翌年の2024年にはフランス・パリ五輪が開催されますから、陸上競技が日本人から注目される大きな大会が目白押しで続くことになりました。

2025年の世界陸上は東京の国立競技場で開催されることが決定しました。

世界陸上が2年連続で開催されるというイレギュラーな現状のなかで、多くの選手やコーチが、パリ五輪にどのように照準を合わせるべきか作戦を練っていると思います。特にマラソン選手にとっては、パリ五輪のマラソン代表を決める「MGC(マラソングランドチャンピオンシップ)」(日本陸連が主催するオリンピックマラソン日本代表選考会)の日程がポイントになります。チャンスは複数あるなかで、MGCに向けて、いつ、どこで開催される大会を選び、どのようにコンディションを整えていくか。そうした調整力が何よりも大切になってきます。

さらに今回の世界陸上の男子マラソンでは、西山雄介選手(トヨタ自動車)が2時間8分35秒という、世界陸上では日本最高の素晴らしい記録でゴールしましたが、13位という結果で入賞には届きませんでした。本人もインタビューで語っていましたが、マラソンにおける世界の壁はますます高くなっています。MGCでは先頭集団を牽引してくれるペースメーカーも、世界陸上や五輪の舞台ではいません(有森裕子 女子マラソン、好タイム続出の陰に「男子」)。そうしたレースにも対応できる力を身に付けないと、世界の壁を乗り越えるのは難しいのだなと改めて感じさせられました。

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開かれた国立競技場が陸上ファンの獲得につながる