ハロウィーンはホラー映画が主役 米国で公開続く理由
例年、アメリカ映画界では10月末のハロウィーンに合わせて、9月から10月にかけてホラー映画が数多く公開される。今年は8月27日に『キャンディマン』(1992年公開の同名ホラー映画のリメイク)、9月10日に『マリグナント 凶暴な悪夢』(『死霊館』シリーズのジェームズ・ワン監督作)、10月15日に『ハロウィン KILLS』(18年公開『ハロウィン』の続編)、10月29日に『ラストナイト・イン・ソーホー』(『ベイビー・ドライバー』のエドガー・ライト監督作)が公開された。
この時期にホラー映画が公開されるのは、ハロウィーンの内容と関係がある。ハロウィーンは古代ケルト人に起源を持つ新年と冬を迎えるお祭りで、夜には死者の霊が家に帰るといわれる。子供たちは魔女やお化けなどに仮装して、近所にお菓子をもらいに行く。日本では「ハロウィーン=仮装」のイメージだが、欧米では「ハロウィーン=お化け」を連想させることから、「ホラー映画を公開する時期としてはピッタリ」とハリウッドで判断されている。
78年のハロウィーンに登場したブギーマン
「ハロウィーン=ホラー映画」の元祖といえそうなのが『ハロウィン』だ。ハロウィーンの夜、殺人鬼が白いマスクを被って次々に人を惨殺する。殺人鬼の名前はマイケル・マイヤーズ、別名ブギーマン。怪力を持ち、感情を表さず、殺人の動機は不明。アメリカで78年に公開され、当時の若い映画ファンに強烈なインパクトを与えた。『13日の金曜日』のジェイソン、『エルム街の悪夢』のフレディに並ぶ、ホラー映画界のアイコンの1人だ。
『ハロウィン』のヒットをきっかけに、映画会社はハロウィーンに合わせてホラー映画を公開するようになる。ホラー映画は若者を中心に根強い需要があるからだ。またアクション大作と比べると低予算で製作できることから、監督やプロデューサーがアイデア勝負で作りやすいという背景もある。
ハロウィーンに公開されたホラー映画で大ヒットしシリーズ化されたのは、近年でいえば『ソウ』と『パラノーマル・アクティビティ』だ。
『ソウ』は04年から10年まで7作が作られた。1作目は猟奇的連続殺人犯ジグソウが仕掛ける死のゲームの巧みなストーリー展開と、死んでいく人間たちの残酷描写が新しいホラー映画として評判となり若者の観客に受けた。映画会社ライオンズゲートでは監督や脚本家を代えながらシリーズを毎年製作。期間を空けず連続して公開することで、「ハロウィーンに見るべき映画は『ソウ』」のイメージを定着、04年から10年まで人気を維持した。その後17年に『ジグソウ:ソウ・レガシー』がハロウィーンに合わせて公開され、21年に『スパイラル:ソウ オールリセット』がハロウィーン以外の時期に公開された。
『ソウ』と入れ替わるように09年に登場したのが『パラノーマル・アクティビティ』だ。同居しているカップルに降りかかる超常現象(パラノーマル・アクティビティ)を固定のビデオカメラで撮影したようなリアリティーで見せる。映画会社パラマウントでは『ソウ』同様、監督や脚本家を代えながら、09年から15年まで6作を作った(5作目のみハロウィーン以外の時期に公開)。
そして18年、『ハロウィン』の新作が復活した。
40年後の続編がシリーズ最高の興行収入
『ハロウィン』は78年から02年まで8作品が作られ、07年に1作目をリメイク、09年にはその続編が作られた。18年版の『ハロウィン』は、タイトルこそ1作目や07年のリメイク版と同じだが、物語は異なる。1作目の40年後を描いているのだ。殺人鬼マイケル・マイヤーズは40年前の惨殺事件で刑務所に収監されていたが、別の刑務所にバスで移送途中、バスが事故にあってマイケルは脱走。彼は事件の現場となったイリノイ州ハドンフィールドへ向かい、40年前の唯一の生き残りローリー(ジェイミー・リー・カーティス)を襲う。
『ハロウィン』は既に10作品も作られており、物語に新鮮味を出すのは大変だ。1作目の40年後という設定を生みだした点に製作者側の苦労が垣間見える。1、2、7、8作目に出演したヒロイン、ジェイミー・リー・カーティスが再び出演。また1作目の監督・脚本・音楽を務めたジョン・カーペンターが製作総指揮と音楽を担当。ファンの思い入れが強い1作目へ最大限のリスペクトをささげた。これらの施策が奏功し、米国では週末興行ランキングで2週連続1位となり、米国での総興行収入は1億5930万ドルをあげ、シリーズ最高記録をあげた。
『ハロウィンKILLS』は続編で、米国で10月15日、日本で10月29日に公開された。物語は前作のラストから始まる。ローリーは自宅に襲ってきたマイケルを家に閉じ込め、火を放つ。彼女は腹を刺されて救急車で運ばれる途中、消防車とすれ違う。自宅の火災は鎮火され、マイケルは脱出する――。
ホラー映画界のアイコン、ジェイソンは1作目をリメイクした『13日の金曜日』が09年、フレディは1作目をリメイクした『エルム街の悪夢』が10年に公開されたが、その後は新作がない。マイケルだけが21年も生き延びている。
イリノイ州ハドンフィールドで40年前にマイケル・マイヤーズが起こした惨殺事件。唯一の生き残りだったローリーの自宅をマイケルが襲うが、ローリーはマイケルを家に閉じ込め、火を放つ。けがをした彼女は救急車で運ばれる一方、家に消防車がやってきて火災は鎮火。マイケルは生き延びる。10月29日公開 東宝東和配給 (C)UNIVERSAL STUDIOS
(ライター 相良智弘)
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