パターン3 「必要以上に自信なさげ」

現職が幹部クラスの人であっても、転職は不安なものです。転職先企業への不安、自分自身の実力への不安、新職場への適応力に関する不安などがつきまといます。しかし、こうした不安を自らつぶしていけるマインドこそが、幹部クラスに求められるものです。

最初は威勢がよかったのに、選考の終盤に近づくほど、当初の勢いがなくなったり保守的なことばかり確認したりするような人も少なくありません。最終面接や内定オファー面談の場で、「福利厚生はどうなっていましたでしょうか」「実際のところ、残業はどれぐらいありますか」「休暇はカレンダー通りに取れるのでしょうか」「退職金はいくらぐらい~」など、自分の処遇に関する質問のオンパレードになることも。

もちろんこれらの事柄は大事なことで、それを質問してはいけないということはありません。ただ、どの場面で確認するかです。

先日、クライアントの成長ベンチャー企業で、最高経営責任者(CEO)が対応した内定オファー面談で、幹部候補として内定提示を受けた人が処遇面や安定性に関する質問ばかりで、CEOから「見誤ったかもしれません」との声が漏れました。

ベンチャーの経営に幹部として参画する人が選考の最終段階で確認したいのが処遇や安定性では、正直、ベンチャーのマネジメントは厳しい感じがあります。

このケースでは、CEOにしっかりとファクトベースでどのような姿勢でやっていく必要があるかを伝えてもらったうえで、私からもベンチャーで経営陣になるとはどういうことかについてあらためてレクチャー。入社後にパフォーマンスを発揮できないのは不幸であるということをすり合わせ、今回は難しいということで合意しました。

選考が進むにつれて、リーダーとしての魅力が目減りしていく人は最終面接、オファーまでたどり着くことはありません。ここで確認してほしいのは、幹部クラスの人が転職先で役員クラス(経営人材)としての役回りを担いたいということであれば、ここまでに挙げてきた事柄がクリアされているかということです。

もし、そうでないならば、無理をするのは企業にも本人にもよくありません。部門を率いる最終責任者ではなく、部門内でのミドルとして成果を出していく役割を全うしましょう。その場合でも、リーダーであれば、自信を持ち、リスクテイクしていく気概と資質は必要ではあります。

幹部クラスの人が転職活動を進めるにあたって、気持ちが空回りしてリーダーらしからぬ立ち振る舞いをしてしまったり、あるいは活動中の高揚感から自分には不相応な役回りを求めてしまったりすることはあるものです。そんなときこそ原点に立ち返り、幹部に求められることは何かを再確認し、自身をしっかりセットアップしたうえで、改めて転職活動に臨んでいただければと思います。

井上和幸
 経営者JP社長兼CEO。早大卒、リクルート入社。人材コンサルティング会社に転職後、リクルート・エックス(現リクルートエグゼクティブエージェント)のマネージングディレクターを経て、2010年に経営者JPを設立。「社長になる人の条件」(日本実業出版社)、「ずるいマネジメント」(SBクリエイティブ)など著書多数。

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