ハライチ岩井勇気 普通の日常が奇妙な笑いの世界に

日経エンタテインメント!

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お笑いコンビ「ハライチ」の岩井勇気がエッセー集第2弾『どうやら僕の日常生活はまちがっている』を発売した。「お笑いは人に見てもらわなくてもいいけれど、エッセーは読んでもらわないと困る」と語るその真意は?

1986年、埼玉県生まれ。幼稚園からの幼なじみである澤部佑と「ハライチ」を結成、2006年デビュー。ボケ担当でネタも作る。『小説新潮』と、本の総合情報サイト『Book Bang』で連載するエッセーをまとめた19年の単行本『僕の人生には事件が起きない』がベストセラーに。TBSラジオ『ハライチのターン!』も多くのファンを持つ。特技はピアノ。猫好き(写真:鈴木芳果)

エッセー集第1弾となった前作『僕の人生には事件が起きない』は累計10万部を突破。今回、待望の第2弾『どうやら僕の日常生活はまちがっている』が出版、しかも初の書き下ろし小説を収録とあって、いよいよ作家に!?と注目を集めるも、「いや、書き物で名を馳(は)せようと思ってないですから」。まったく色気なし。

「今回も、出版社のほうから『小説書きましょう』って言われて。その言い方も、『岩井さん、これだけ書けるんだから、小説いけますよ!』と、さも『ステップアップしましょうよ』みたいな感じで。ああこれ、確実に“小説家”のほうが上だと思ってんな……と。その扱いの違いに、腹立っちゃって。だからエッセーっぽいもの書いて小説だって言い張ってるんです」

芸人、岩井勇気。澤部佑とのコンビ・ハライチの、「陰に隠れがちなほう」で、「しかしネタは10割書いている」ため、「書けそうだな」と思われて『小説新潮』から執筆依頼があったのが3年前。さらにウェブでの連載も始まり、月に2本のペースで、日常を独自の視点でつづってきた。今作でも「喉に刺さった魚の骨が取れない」「地球最後の日に食べたいもの」「渋谷で初めて『寅さん』を観た」と、書かれているのはびっくりするくらいなんでもないことばかり。しかし、それが岩井の手にかかると、奇妙な笑いの世界になる。

「何も起こってないのに1本話が書けた、っていうほうがいいんですよね。今回なら、『コラボキャンペーンの悲劇』。話としては、『牛丼屋でアニメのクリアファイルがもらえなかった』だけです。ただ、その時の僕の悲しさを、読む人になんとか伝えたい。それで、貧しい家の小学生の物語を想像して加え、この悲劇をより分かりやすく説明しました。この一編は、自分でもわりと気に入っています」

物事のコツをつかむのがとにかく早い。美術や文章も、「どうすればうまく“見える”か」という目で観察するのだという。

「エッセーなら、最後の1文をうまい感じに書いとけばいいんでしょ? みたいな。多用しすぎて担当編集者に注意されましたけど(笑)。たいていのことは分解していけばロジックが分かります。ただ、相方の澤部だけは、途中までしか分解できないんで理解不能(笑)。マネできない。すごいなって思います」

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ハライチの漫才が面白くなく見える仕事はしたくない