日経エンタテインメント!

ハライチの漫才が面白くなく見える仕事はしたくない

「なんでこの人こういうことするんだろう」と気になる。行動原理を考えるのが楽しいのだと言う。「珪藻土バスマットをめぐる母との攻防」編で繰り広げられる、相手を思い通りにしようとする母と息子のやりとりは秀逸だ。

「無自覚な悪、みたいなものを糾弾したいわけではないんです。ただ知りたいだけ。結果、『この人にいやらしい部分があるからなんだな~』って(笑)、行動原理が分かれば、それで納得なんです」

ラジオパーソナリティー、ゲームのプロデュース、マンガの原作、音楽制作、ドラマやCMにも出演と、多方面で才能を発揮している。

「ハライチの漫才が面白くなく見えるような仕事は、したくない。だから小説家にはならないし、アイドルみたいにやたら写真を撮られるのも厄介です。そういう扱いで売られている芸人は軽蔑します。そして、俺が1番、俺のことを監視してますからね。俺が1番、目が鋭いんですから(笑)」

出版社からは3冊目を視野に入れての連載続行を打診されている。“監視”のなか、執筆活動は続く。

「お笑いは、自分がめちゃくちゃやりたいことなんで、極端なことを言えば、人に見てもらわなくてもいいんです。でも、エッセーは、たいしてやりたいことでもないからこそ、読んでもらわないと困りますね。やりたくもないし手応えもないし読んでももらえないじゃあ、意味が分かりません(笑)」

『どうやら僕の日常生活はまちがっている』
 連載エッセー22編に、書き下ろしエッセー1本と、書き下ろしの初小説を収録。さらりと描いて絶妙にうまい自筆イラストも多数。「小説 僕の人生には事件が起きない」は、ある夏の日の夕刻、スーパーマーケットに買い物に出かけた主人公が、路地を抜けようとして“裏”の世界に迷い込む物語。小説でありながらエッセーのような、読者を現実と非現実の狭間へと連れていく、不思議な世界観が印象に残る。(新潮社/1375円)

(ライター 剣持亜弥)

[日経エンタテインメント! 2021年12月号の記事を再構成]