SNSで被害にあったら距離を置くのが一案だ。一方で被害を受ける女性がSNSから退場させられるのもおかしな話である。去る女性が多ければ、ネット空間の多様性が失われることにつながる。
誹謗中傷を野放しにしない、と意思を示すことも必要なのだろう。被害に直面したとき、どう対応すればいいのかわからない人は多いと思う。私は信頼できる人を集めてコミュニティーをつくり、ノウハウを共有している。ネット上の誹謗中傷に対応する法規制は整い始めている。誰かと話し合うことで精神的に楽になることもある。
フジテレビのリアリティー番組に出演した女性が、SNSで誹謗中傷を受けた後に亡くなった問題の記憶は新しい。発信する人は軽い気持ちでも、相手に計り知れないダメージを与えることはある。そうしたことを伝えるメディア教育も本質的に重要だと感じる。
スプツニ子!
アーティスト、株式会社Cradle代表取締役社長。インペリアル・カレッジ・ロンドン数学科、情報工学科を卒業後、英国王立芸術学院デザイン・インタラクションズ専攻修士課程修了。テクノロジーによって変化していく人間の在り方や社会を反映した映像インスタレーション作品を制作。2013年マサチューセッツ工科大学(MIT) メディアラボ助教に就任。その後、東京大学大学院特任准教授を経て、19年から東京芸術大学デザイン科准教授。https://cradle.care/

[日本経済新聞朝刊2023年1月9日付]