突破口が見えたのが4年目。初めてプロジェクトのリーダーをやったら、それまで小手先で考えていた低い目線だったのが、数カ月・数年先のあるべき姿から、もっととるべき道があると急に見えてくるようになったんです。それが製造業の営業改革や生産性向上などの現場系プロジェクトで、クライアント企業の取締役に「御社のミッションがよくわからない。自分の言葉で言わないとだめですよ」と、飲み屋でしつこく意見していましたね。退職してしばらくたって、その方が社長になって、「2年かかったけど、ちゃんと実行できたよ」とメールで報告してもらえたことは、自分の関係構築力が結実したと感じた瞬間でした。

起業家の悩みを想像しながら伴走

――やっとマネジャーに昇格できたところで、なぜVCへ?

もっとリスクをとって投資する立場、プライベートエクイティ(PE=企業買収)ファンドに興味がありましたが、今までの延長のような気もしたんです。それなら、次に来る技術を予測しながら世の中を変革していく方へ行けそうなVCを考えるようになりました。直接のきっかけは、転職サイト経由で今の会社からスカウトメールが来て、社長と面談したときに、初めて公務員キャリアを前向きに評価してもらえたことです。

それまで、どんなエージェントもマッキンゼーのキャリアしか見ておらず、外務省のキャリアがほぼなかったことになっていた印象で少し悲しかったのですが、役所と対話ができること、考え方がわかることが価値になることを知りました。

VCの仕事は「やる気とエネルギーの火の粉をくべるようなもの」と語る鈴木さん

――VCの仕事の魅力は。

好きな本の1つ、『愛するということ』(エーリッヒ・フロム著)の中で、人を愛することができるかは愛する側の能力の問題と説いていますが、投資も同じ。信じ切る力の問題ではないかと思います。将来を見渡せないベンチャー投資では、この会社が成長するかどうかなんて答えはわからないなかで、「成長すると信じている」と確信できることが大事です。経営者と人間同士の対話をしながら、新たな刺激や視点をいただき、逆にこちらは少しでも新たな気づきを提供する。一緒にイノベーションの火種を巻き起こしていく、そんな魅力がこの仕事にはあると思います。

――順風満帆なように見えます。キャリアで悩みはないですか。

総合的に勘案する力や俯瞰(ふかん)力はあると思う一方で、応用力だけでやってきたので、この分野に強いというバックグラウンドや根っこがないことが自分のキャリアの弱みだと思っています。VCの仕事では「鈴木さんと話せて良かった」と起業家から言ってもらえることも多く、すごく楽しい。でも、コンサルと同様に間接的な気もしていて、自分の事業の基礎がなく、自分で経営したこともない。そこは正直なところモヤモヤしています。

もし自分で会社を経営したらどんな組織が作れるだろうか、など起業家の方の悩みを想像し、一緒に社会変革に向けて歩もうとする努力で補っていますね。「日本経済を活性化させるためにはどんなことでもやりたい」という思いは官僚時代から変わらないけれど、自分がどうやってインパクトを出せるかを考えているところです。

(安田亜紀代)