このときのポイントは、すでに入っているメモを見て、それに関連することを書いてメモしていくことです。この作業は、思っているよりかなり簡単で、はかどるはずです。なぜなら、自分が興味をもてることしか入っていないからです。
この作業は、アイデア、主張、議論を、収拾するのではなく発展させることが狙いです。あなたの新しい情報は、すでにある情報に照らして、対立するか、 修正するか、補足するか、付け加えるものでしょう。また、メモのアイデア同士を組み合わせて、何か新しいものを生み出せないでしょうか。アイデアを見て、どんな疑問が浮かんだでしょうか。
そして、新しく思い浮かんだひとつのアイデアがあれば、またそれに対してひとつだけ、メモを書きます。他の人に読んでもらうつもりで書きましょう。
こうやって、大事な内容をすべて、メインのツェッテルカステンに収めます。
こうすれば、あなただけの考えが書かれたメモが、断片的にではなく、体系的にたまっていきます。メモ同士をリンクさせることが、このツェッテルカステンの大事なポイントなのです。
たくさんの情報を収められるのが「ツェッテルカステン」
ここでご紹介したのは、ツェッテルカステンのメモ術の一部にしかすぎません。今日のある人は、ぜひ本書『TAKE NOTES! メモで、あなただけのアウトプットが自然にできるようになる』を手にとってみてください。
通常のメモ術だと、自分がとったメモを、どうしても体系的には保存できません。メモは、テーマごとにフォルダに入れるのが普通でしょう。しかし、それでは情報がこま切れになってしまうし、どうしても「今自分がメインで取り組んでいること」だけに情報が集中してしまいがちです。
しかし、私たちは、一度にいくつもの疑問が浮かぶことは止められません。いま取り組んでいる以外の疑問についても、将来的に考え、文章を書くかもしれないのです。
たとえ本や文章にしなくても、さまざまなことをメモする習慣は確実に自分の知的成長のためになります。作業中に出会った情報はその場で収集し、よいアイデアをみすみす捨てないようにしましょう。
(構成:日経BP 中野亜海)
教育・社会科学分野の作家・研究者であり、現在はドイツのデュースブルク・エッセン大学暫定教授。執筆やコーチング、講演も行う。バンコクに住み、2年ほどアジアを旅する。メモをとることで、読書や思考をより楽しんでおり、その結果をさまざまな出版物にしている。著作に『Experiment and Exploration:Forms of World-Disclosure』 (Springer)がある。