黒潮町缶詰製作所の「黒潮オイルのマグロとキノコ」(100グラム、540円)

■和食にも洋食にもぴったりの一缶

副菜の缶詰を数多く手掛けているのが、高知・黒潮町の黒潮町缶詰製作所だ。「7大アレルゲン」を使わないのが同社のポリシーで現在、全商品に卵、乳、小麦、ソバ、落花生、エビ、カニを使っていない。それらの原料を仕入れないのはもちろん、従業員が食事を摂る建物を製造工場と分けているほどの徹底ぶり。というのも、従業員が持参する弁当に7大アレルゲン物質が入っていた場合、工場に入り込む可能性がゼロではないと考えているからに他ならない。

うまみ調味料を使わないのも特徴で、代わりに塩麹(しおこうじ)や魚のダシなどの天然素材を上手に組み合わせ、うまみを加えている。だから後味があっさりしていて、素材の風味が伝わってくる。

この「黒潮オイルのマグロとキノコ」は、国産マグロと黒潮町産のシメジをオイル煮にしたもの。一見するとスペイン料理のアヒージョのようだが、塩麹のうまみとショウガの風味が利いているためか、油っこさはほとんど感じない。マグロは柔らかく、シメジは逆にシャキっとした歯応えがある。和食にも洋食にも合わせられる副菜となっている。

今回紹介した3つの缶詰は、数ある副菜缶詰のほんの一部にすぎない。副菜の定義は曖昧だけれど、主菜の他に1品プラスするという見方をすると、対象となる缶詰が予想以上に多くあることが分かるはずだ。

時短という概念が古くなり、同じ時間を使うなら高パフォーマンスを得たいというタイパ(タイムパフォーマンス)が叫ばれるようになった。手間を掛けずに食事の満足度を上げるなら、副菜缶詰を取り入れるのも手であります。

(缶詰博士 黒川勇人)

黒川勇人
1966年福島市生まれ。東洋大学文学部卒。卒業後は証券会社、出版社などを経験。2004年、幼い頃から好きだった缶詰の魅力を〈缶詰ブログ〉で発信開始。以来、缶詰界の第一人者として日本はもちろん世界50カ国の缶詰もリサーチ。公益社団法人・日本缶詰びん詰レトルト食品協会公認。

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