生ハム・サラミ・チーズもその場でカットされて量り売り

この店のもう一つの魅力は、生ハム・サラミ類やチーズがその場でスライス、カットされて量り売りされることだ。しかも、スライスやカットしてくれるのは、イタリア料理とチーズに精通するプロたちである。空気を含む羽根のように薄くスライスできるかどうかがおいしさを左右する生ハムは、特注カラーのイタリア製スライサーでカットされる。生ハム・サラミ類を包む紙までイタリア製で、卵の殻を使ったこの紙には環境と安全・安心への配慮もある。
総菜とワインバースペースの調理を担当するのは、中部トスカーナ州と南部プーリア州での修業経験があるイタリア料理人の山本和輝さん。現地の味を生かして山本さんが作る「豚と白インゲン豆のトマト煮こみ」などが総菜としてショーケースに並ぶ。幅広いイタリア産チーズの品ぞろえは、店長の小林深雪さんがCPA(チーズプロフェッショナル協会)認定チーズプロフェッショナルだからこそである。
この連載コラム第1回で紹介したイタリアチーズ専門店で働いていた小林さんが、今はこの店の店長を務める。30キログラム超の円筒形パルミジャーノ・レッジャーノ(チーズ)は小林さんが自らかち割って、小分けで販売している。「今スライスした、今ボトリングした、今削ったところをお客様に見てもらうことで安心と信用をしていただける」と大沼シェフは言う。

「お客様がプロフェッショナルと会話をしながら買い物する食料品店を開きたかったんです。この人から買いたいと思ってもらえる店を」と大沼シェフ。そこには、イタリアで自分が楽しかったことを客にも体験してほしいという願いがある。コロナ禍で失われてしまっていた買い物の会話の楽しみを、ウィズ・コロナ、アフター・コロナ時代に先駆けて、この店は客にとり戻させるだろう。
中村 浩子
イタリア食文化文筆・翻訳家。東京外国語大学イタリア語学科卒。イタリアの新聞社『ラ・レプブリカ』極東支局長助手をへて、文筆・翻訳へ。国際薬膳師の資格を持ち、「薬膳イタリアン」を日本全国に広める。著書に『イタリア薬膳ごはん』(共著)、『「イタリア郷土料理」美味紀行』、訳書に『イタリア料理大全 厨房の学とよい食の術』(共訳)『スローフード・バイブル』。
イタリア食文化文筆・翻訳家。東京外国語大学イタリア語学科卒。イタリアの新聞社『ラ・レプブリカ』極東支局長助手をへて、文筆・翻訳へ。国際薬膳師の資格を持ち、「薬膳イタリアン」を日本全国に広める。著書に『イタリア薬膳ごはん』(共著)、『「イタリア郷土料理」美味紀行』、訳書に『イタリア料理大全 厨房の学とよい食の術』(共訳)『スローフード・バイブル』。