
新型コロナウイルス感染拡大をきっかけに、総菜・食料品店を新たに設けたイタリア料理店は少なくない。コロナ禍中に増えた“おうちイタリアン”のための食材・総菜提供と、料理店への来客数減少による売り上げ減を補う意味がある。そのようななか、イタリアの昔からの習慣さながらに、ワインとオリーブオイルの量り売りを始めた食料品店がある。東京の下町、東京メトロ・門前仲町駅近くの「ベルリンガッチョ・アリメンターリ」(東京・江東)だ。
この店は、フィレンツェ風ビステッカ(炭火焼き骨付きステーキ)が人気の「トラットリア ブカ・マッシモ」(東京・江東)の姉妹店。大沼清敬オーナーシェフが、トラットリアとは駅の逆出口側に開店させた。総菜や生ハム・サラミ類、チーズだけでなく、ワインとオリーブオイルまですべて量り売りする店である。店名の「アリメンターリ」とはイタリア語で「食品」の意味だが、食料品店も指す。

ワインの量り売りは、初回に500円で客がオリジナルボトルを買ってワインを店側に入れてもらい、次回持参時に、洗浄乾燥した空き瓶と交換し、またワインを注いでもらう。ワインの量り売りは、菓子製造販売会社シャトレーゼ(甲府市)のグループ企業のワイナリーや、パピーユ(大阪市)が「FUJIMARU東心斎橋店」で自社醸造ワインを売る例はあった。
だが、イタリアから輸入されたバルクワイン(「ベルリンガッチョ・アリメンターリ」では16リットルの樽〔たる〕型容器に詰められたワイン)を窒素ガスを使って保存、セラー内で温度管理し、販売する店はこれまで日本では聞いたことがない。「短期間ナポリに住んでいて、近所の酒屋へ友人と行ったとき、コーラの空きペットボトルに樽からワインが注がれ、リットル当たり数ユーロで売ってもらっていたんですよ。品種も何もわからないワインでした」と初めて量り売りを体験したときの感動を大沼シェフは楽しそうに語る。
ワインの量り売りというアイデアは当初、大沼シェフの頭になかった。イタリア中部エミリア・ロマーニャ州専門のワイン・インポーターと話をするうちに盛り上がって決めたのが、バルクワインの量り売りだった。「自分がイタリアで感動したものは、お客様も感動してくれる」。大沼シェフはそう強く信じて始めた。