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ベンチャー企業にとって最大の悩みは資金調達の難しさだ。「株式投資型クラウドファンディング(CF)」は、資金を必要とするベンチャー企業が、インターネット上で事業の概要や社会的意義を公開し、一般の個人投資家から出資を募る仕組み。2月1日に日本クラウドキャピタルから社名変更したFUNDINNO(ファンディーノ、東京・品川)は2017年に日本初となるプラットフォーム「FUNDINNO」を創設した業界のトップランナーだ。最高経営責任者(CEO)の柴原祐喜氏(37)自身、同社の立ち上げからサービスが軌道に乗るまでいくつものピンチに遭遇した。ベンチャー企業の苦労を身をもって知っているからこそ、事業に賭ける思いは熱い。

業務開始前に資金ショートの危機

時価総額が10億ドル(約1150億円)以上で、未上場のベンチャー企業を指す「ユニコーン」。米国の調査会社によると世界には現在、900を超えるユニコーン企業があるが、米国の470社、中国の169社と比べ日本は5社とケタ違いに少ない。

その理由と指摘されるのが、日本では未上場企業の資金調達が海外に比べて難しい点だ。資金調達のために上場を急がざるを得ず、結果として成長が鈍化し、ユニコーンが育たないという悪循環に陥っているとも言われる。

起業家を目指してカリフォルニア大学に留学後、明治大学大学院で学び、日米のベンチャーをめぐる環境の違いを熟知していた柴原祐喜氏は、そんな状況に風穴を開けようと15年、大学院で出会った大浦学氏と共に日本クラウドキャピタルを創業した。同年、英米に続いて日本でも株式投資型CFが解禁されことを受け、ベンチャー企業と一般投資家をつなぐ国内初のプラットフォームを作ろうと意気込んだ。

しかし業務を始めるにあたって必要な第一種少額電子募集取扱業の登録で壁にぶち当たる。

「登録を受けるには、金融の知識を持つ人材の適切な配置が必須とされているのですが、僕も大浦も、金融業界で働いた経験がありません。いろいろなツテで専門知識を持つ人材を集めましたが、組織体制を整えたところで、いつになったら登録審査の結果が出るのか、当局の判断次第なので全くわからない。もちろん登録を受けるまでは営業活動もできません。その間、固定費は垂れ流し状態で資金はみるみる減っていきます。このまま資金ショートして何もしないまま会社を潰してしまうのではないかと恐怖で身が縮みました」

FUNDINNO代表取締役CEO 柴原祐喜氏

FUNDINNO代表取締役CEO 柴原祐喜氏

もうダメかもしれないと思った時のことだ。最高財務責任者(CFO)の平石智紀氏のツテで、あるエンジェル投資家と出会った。事業にどれだけ社会的な意義があるか、無我夢中で訴えた。すると会ったその日のうちに「わかった。いくら必要か言ってくれれば、明日振り込む」と返事があり、約束通り1億円近い資金が振り込まれた。奇跡だと思った。

「多くのベンチャー企業の資金調達は綱渡りです。僕たちはぎりぎりのタイミングで素晴らしいエンジェル投資家の方に出会えましたが、これには再現性がありません。チャレンジしようとした時に、支援してもらえる環境に恵まれるかどうかが、運次第という状況はフェアじゃない。誰もがITというツールを使って、自分のアイデアを世の中に訴え、共感してくれる人がいればフェアに挑戦できるような世界を作りたい。自分自身も苦労したことで、その思いが一層強まりました」

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