
各国の逸品が集結するわが国だが、中でもとりわけ“日本人が好む逸品”がある。その理由は、日常との親和性。日本の暮らしと世界の逸品、その関係性を今、改めて考えてみよう。
■JOHN LOBB “Lopez”
はだしの心にフィットする、自由と優雅の融合

靴は日本人にとって、ハレとケを切り替えるスイッチだ。靴ひもをきりりと結び終えたとき、すでに心は見えない鎧(よろい)をまとっている。さりとて、時には鎧を脱ぎ捨てて気持ちははだしのままで出かけたい。日本人がローファー好きなのはそんな潜在意識の表れなのかもしれない。するりと足を滑らせるだけで外へと歩き出せるローファーは、ハレとケの境界を軽やかに往来する自由さの象徴なのだ。
そんな自由を、最上級の優雅さとともに謳歌できる。それがジョンロブ「ロペス」の魅力である。はだしの心にパリの気品をまとえば、心晴れ晴れ。一日のスタートは上々だ。
■MACKINTOSH “New Dunkeld”
日本人の胸を打つ たゆまぬ“改善”の心意気

“改善”は日本の美徳だ。微差を吟味し、時代の流れも取り入れながら、“もっといいもの”を追い求める。それでいて、本流を守ることを重んじステップ・バイ・ステップの進化を好む。マッキントッシュのゴム引きコートは英国の伝統名品でありながら、そんな日本的美学に最高のシンクロを見せる一着だ。世界最古の防水布=ゴム引きクロスと手仕事による仕立てをかたくなに守る。それでいて、時代に沿った微差の改善を常に実現してきた。全体のたたずまいをより軽やかに進化させ、モデル名を「ニューダンケルド」へと改めた大定番ステンカラーコートはまさしくその象徴だ。完成は次なる挑戦のスタート。そんな心意気が、我々の胸を打つのである。
■L.L.Bean “Boat and Tote”
そのおおらかさは時代の変化だって簡単に飲み込んでしまう

L.L.ビーンの「ボート・アンド・トート」は、おおらかさの象徴だ。とことんシンプルで、荷物をポイポイと放り込める。キズや汚れも気にならない。ジーンズからブレザーまでマッチする。最近ならスーツに合わせるのだってアリだ。L.L.ビーンが日本に定着してから数十年。我々のライフスタイルはずいぶんと変わったが、ボート・アンド・トートはいつも側にいる。ポリ袋をもらうのにそろそろ気が引けるようになった今ならたとえばお買い物バッグに使ってもいい。SDGs、そんなちょっと難しい話題もボート・アンド・トートはおおらかに飲み込んでくれるのだ。

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