
ボンジュール!クリスマスモード一色のフランス・パリからユイじょりがお届けする「食の豆知識」。今回のテーマは、寒さの到来とともに旬をむかえる海のミルク、「カキ」である。
カキといえば、肝臓の働きをサポートするタウリンが豊富に含まれていることで有名な、酒飲み大人の強い味方。栄養価に優れ、江崎グリコの子ども向け栄養菓子「グリコ」にも「カキ」のエキスが配合されているほどだ。
OECD(経済協力開発機構)の統計による2019年の国別カキ生産量上位5カ国は、中国を筆頭に韓国、アメリカ、日本、フランスと続く。ここフランスはヨーロッパでダントツ1位だが、人口比にかんがみると韓国(人口約5100万人)の生産量が多いことに驚く。

カキという食材は「食あたりなどで懲りてもう2度と食べたくない」という人も多いように思う。だが筆者は、過去パリで2度ほどカキに当たったことがあるにも関わらず、「死ぬ前に食べたいもののひとつは生ガキ」と豪語するカキ狂である。

これだけ筆者が生ガキを愛するようになったのは、ひとえにフランスのカキ文化にどっぷりつかり、その魅力に取りつかれたからだ。そんなフランスのカキ文化を、まずは垣間見ていただくことにしよう。
パリの街にあふれる、カキ文化
つかの間の夏が過ぎ、徐々に肌をさす空気が冷たくなると、今年もカキの季節がやってきた!と胸が躍る。パリの街に点在する「Le bar a huitres(バー・ア・ユイットル)」、すなわちオイスターバーはにぎわいをみせ始め、ブラッスリーやカフェの店頭にも、貝や甲殻類を指す「fruits de mer(フリュイ・ド・メール、直訳すると海のフルーツ)」が並ぶコーナーがお目見えする。

パリジャンたちの胃袋を支える日々のマルシェ(市場)にも、カキ専門店が軒を並べるようになる。渡仏したての頃は、この圧巻の光景に驚いたものだ。隣に小さなスペースが併設され、その場で開けたてのカキを白ワインとともにいただけるお店もある。

ちなみにこうしたカキ専門店などでは、「ecailler(エカイエ)」とよばれる貝開け専門の職人が存在する。農業大国フランスでは、毎年、大統領も視察に訪れる全国規模の農業見本市がパリで開催されるが、そこで行われるのが「カキの殻の早開けコンクール」というユニークなイベント。2019年には、100個のカキを7分21秒(1個あたり4.41秒)で開け切るという驚愕(きょうがく)の記録も生まれている。