新型コロナで見えてきた ニッポンの課題と今後の視点『コロナ制圧 その先の盛衰』

新型コロナウイルス禍は社会・経済の様々な課題をあぶり出した

新型コロナウイルス感染症は日本の社会・経済に何をもたらしたのか――。本書『コロナ制圧 その先の盛衰』は新型コロナ感染が始まって以降の日本だけでなく世界の動向、各国のワクチンなど感染症対策、その経緯やトピックをまとめたものだ。新型コロナを巡る論点が豊富なデータや図表を使いながらわかりやすく整理されており、まずこれを1冊読めばコロナの背景や課題に関する基本知識が得られるだろう。それと同時に、感染からあらためてこの約1年半を振り返り、少子高齢化や人手不足、進まぬ企業再編、デジタル化の後れといったコロナであぶり出された日本の抱える課題にも著者は言及している。コロナ後を見据え、日本の進むべき道をどう考えるか、若手リーダーにも必読の本といえそうだ。

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著者の梅屋氏

著者の梅屋真一郎氏は野村総合研究所のシンクタンク部門である未来創発センター制度戦略研究室長。東京大学を卒業後、野村総合研究所に入社し、米国勤務、経営企画部などを経て、2013年4月から現職。新型コロナウイルス感染が拡大した20年3月以降、社内で「NRIコロナ対策プロジェクト」を率い、コロナウイルス関連の政策提言や情報提供を続けています。

コロナ制圧の道

本書は全7章で構成されています。第1章ではまず、感染症対策の「切り札」ともいわれるワクチン接種の各国の動向を解説。第2章でファイザー製やモデルナ製で使っている「mRNA」と呼ぶワクチンの開発のきっかけとなった女性科学者の研究秘話にスポットを当てます。第3章では先行してワクチン接種が進んだ米・英・独・仏・カナダ・イスラエルの6カ国の正常化に向けた対策にスポットを当て、日本の状況との比較を試みています。第4章以降はコロナ禍で顕在化した日本の社会や企業が抱える課題に踏み込みながら、第7章で日本の今後のあるべき方向性を読み解きます。

文章は平易かつ主張も明快。新書で、分量も250ページほどなので、それほど抵抗なく読み進めていけます。驚くのは執筆の時期です。日本で「第5波」と呼ばれ全国で感染がピークにあった今夏のさなかに書かれていますが、その後、秋に新規感染者数が減少傾向に向かう足元の状況や、自粛疲れの反動から来る「リベンジ消費」を見通しています。著者の先読みの確かさがうかがえます。

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「リベンジ消費」が活性化
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