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ユーグレナは2021年、会社の定款の事業目的を国連の持続可能な開発目標(SDGs)の17項目に完全に合わせた内容に刷新しました。社長の出雲充氏は「利益を最優先する従来の株式会社とは違う新しい株式会社のあり方を社会に向けて発信したい」と話します。かねて際限なき利益追求という今の資本主義に異議を唱えている出雲氏ですが、最近は「人新世の『資本論』」(斎藤幸平著)について聞かれることが多いと言います。同書はマルクスの最晩年の思想をひもときながら、「気候変動や格差問題の解決には資本主義からの脱却が必要」と説き、40万部超のベストセラーになりました。出雲氏はこの本をどのように読んだのかを聞きました。

(5)金もうけよりSDGs 新しい株式会社の定款を変更

世間で非常に話題になった「人新世の『資本論』」について、よく感想やコメントを求められます。何でなんでしょうね。私ももちろん拝読しましたし、著者の斎藤幸平先生にお目にかかって話したこともあります。これだけ多くの関心を持たれる本を書いたというのは素晴らしいことだと思います。特に資本主義の欠点を指摘された部分については、私も大いに納得しながら読ませていただきました。

出雲充 ユーグレナ社長

出雲充 ユーグレナ社長

ただ、「出雲さんも同じ考えなんですよね?」と言われることが多いので、今回はあえて私の考えとは違うなと感じた部分について話しましょう。私は斎藤先生が専門とする経済思想や社会思想などは完全な門外漢ですので、そういう難しいことは分からない「ミドリムシのひがみ」と思って聞いていただければと思います。

「SDGsは『大衆のアヘンである!』」で始まる話題本

私の考えとは全く違うと思ったのは冒頭と結論の部分です。同書は「SDGsは『大衆のアヘンである!』」というぎょっとするような見出しで始まります。先生はレジ袋削減のためにエコバッグを買ったり、ペットボトル入り飲料を買わないようにマイボトルを持ち歩いたり、自動車をハイブリッド車にしたりするようなことは「その善意だけなら無意味に終わる。それどころか、その善意は有害でさえある」とかなり挑発的です。

その理由は「温暖化対策をしていると思い込むことで、真に必要とされているもっと大胆なアクションを起こさなくなってしまうから」。「政府や企業がSDGsの行動指針をいくつかなぞったところで気候変動は止められない。SDGsはアリバイ作りのようなものであり、目下の危機から目を背けさせる効果しかない」と手厳しい指摘が続きます。そして、かつてマルクスが、資本主義のつらい現実が引き起こす苦悩を和らげる「宗教」を「大衆のアヘン」だと批判したことになぞらえ、SDGsは現代版「大衆のアヘン」だと言うのです。

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