中盤で展開される「先進国の資本主義は(アフリカやアジアや南米など)グローバルサウスの犠牲の上に成り立っている」という指摘や、先進国が謳歌してきた豊かな生活が地球に大きな負荷をかけ、もはや資本主義よりも前に地球がなくなってしまうのではないかという危機感、従来通りの経済成長を続けながら二酸化炭素(CO2)排出量を十分に削減するなど到底不可能であるといった問題意識には同感します。

しかし、それらの解決策として斎藤先生が提示する「脱成長コミュニズム」はピンときませんでした。資本主義経済が重視する「商品価値」ではなく、「使用価値(有用性)」に重きを置いた経済への転換や労働時間の削減、画一的な分業の廃止、生産手段の民主化など、これまでの経済・社会の仕組みの大転換を唱えているわけです。

グラミン銀行創始者のユヌス氏に学んだことが多いという

難しくて理解できなかったというのもありますが、私の考えと大きく違うと感じたのは「一発逆転」を狙う考え方です。今の地球が先の大戦の末期並みに危機的であることは確かなのですが、「世界最大の戦艦『大和』を造れば劣勢を挽回できる」という戦時中のお偉いさんや知識人たちが抱いた一発逆転的な発想では結局、物事を動かすことはできないのではないでしょうか。「脱成長コミュニズム」への大転換で、今の資本主義の欠陥を全部直すというのは確かに実現できれば素晴らしいのですが、ミドリムシ的な発想の私としては一歩ずつ地味にやっていくしかないと思うのです。SDGsは「大衆のアヘン」であり、エコバッグやペットボトルは無意味だと言いますが、私はそういうものの積み重ねで社会を変えたいし、変えられると思っています。

大きい仕事も最初はスモールステップから

そこで私が思い浮かべるのはグラミン銀行創始者のムハマド・ユヌス氏です。ユヌス氏はマイクロファイナンスと呼ぶソーシャルビジネスを始めた方で、世界最貧国の一つ、バングラデシュで暮らす約939万人に日本円で累計3兆円を超える融資をし、生活基盤を作らせることで彼らを貧困層から救い出しました。そのユヌス氏が私に教えてくれたのは「どんなに大きい仕事も、常に最初はスモールステップから始まる」ということです。

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