ユヌス氏はバングラデシュが大飢饉(ききん)に襲われた1974年、42人の貧しい人に日本円で3000円ほどを無担保で貸し出しました。そうしたやり方が農村にはびこる貧困の解決に有効だというのが徐々に分かり、グラミン銀行の融資額はどんどん拡大します。そして、ユヌス氏は2006年にノーベル平和賞を受賞し、世界中の人々から「奇跡を成し遂げた」と称賛されました。でも、決してものすごい理論を編み出したとか、従来のやり方からの大転換をしたわけではありません。「一発逆転」ではなく、42人に3000円を貸すという非常にありふれた方法での小さな一歩が出発点でした。というわけで私は断然、スモールステップ派なのです。

下から目線で一歩一歩

前回も話しましたが、東京大学の秋入学や、ジェンダー平等を実現するために議員や会社役員の一定割合を女性に割り当てる「クオータ制」でさえ、日本は総論賛成・各論反対で全く実現できていないんですよ。そんな国で、脱成長への大転換なんて絶対に難しいでしょう。だから、私は皆さんがマイバッグやマイボトルを持ち歩くのを次世代のバイオ燃料をはじめとする科学技術で大いに応援し、支えていきます。ミドリムシらしく、下から目線で一歩一歩やってみせようと思います。どちらがいいかは長期的に皆さんに判断していただくしかないですね。

出雲充
1980年広島県生まれ。2002年東大農学部卒、東京三菱銀行(現三菱UFJ銀行)入行。05年ユーグレナを創業。同年、世界初となる微細藻類「ミドリムシ(学名・ユーグレナ)」の食用屋外大量栽培に成功。世界経済フォーラム(ダボス会議)のヤンググローバルリーダー。第1回日本ベンチャー大賞「内閣総理大臣賞」受賞。経団連審議員会副議長。

(ライター 石臥薫子)

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