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料理も菓子も本格派 イタリア雰囲気そのままのバール

イタリア美味の裏側(13) イタリア食文化文筆・翻訳家 中村浩子

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イタリアの「バール」と呼ばれる店をご存じだろうか。本来は、コーヒーの専門家バリスタがつくるエスプレッソ(コーヒー)を主体とした「軽食も菓子もアルコール飲料も出すカフェ(喫茶店)」だ。しかし、時代の流れに合わせ、しっかりとした食事がとれるバールも増えた。日本でも、新型コロナウイルス感染拡大などいろいろなきっかけで、本格的な料理と菓子を出すバール形式の店が出てきた。

まずは、喫茶店文化が健在の京都市内にある「ボッカ・デル・ヴィーノ」(下京区木屋町)からご紹介しよう。「イタリアで働いた経験があれば誰でも、バールを開きたいと思うのではないでしょうか」。そう語るのは、オーナーシェフの野宮昭昌さんだ。野宮さんはローマの「リストランテ・ス・エ・ジュ」で1990年に料理修業したあと、京都府長岡京市のイタリア料理店で働いた料理人である。その後、京都市内に自分の店を開店させ、2015年にいまの木屋町に移転させた。

本場イタリアのバールには「バンコ」と呼ばれるカウンターがある。地域の住民や勤め人が立ち飲みしながら井戸端会議をする憩いの場であり、観光客にとっては情報収集の場でもある。ワインと料理を主とする野宮さんの店にもカウンターがあり、お客も楽しんでいたのだが、あまり活用はされていなかった。ところが、新型コロナウイルス感染対策のための緊急事態宣言が京都にも出され、酒類の提供ができずに客足が落ちたのをきっかけに、カウンターを使って、いままでやりたかった「朝バール」(朝8時~ 10時ラストオーダー)をはじめたところ、好評を博した。

メニューは、三日月形のパン「コルネット」、パンに具をはさんだ「パニーノ」、カナッペの「クロスティーニ」、サンドウイッチの「トラメッツィーニ」など。そのうちに、ローマのバールで食べられる「マリトッツォ」(生クリームをはさんだパン)を従業員である女性菓子職人がつくって出したところ、人気に火がついた。

「パニーノ」のパンにもこだわりがある。女性菓子職人がつくるローマのパン「ロゼッタ」に、魚のカツレツをはさむのだ。わたしもローマに住んでいた1980年代に、焼きたてのロゼッタを朝に買いに行った思い出がある。ロゼッタは、中が空洞になったパンで、つくり方が難しく手間がかかるので、本場ローマでもつくれる職人が減っている。

また、イタリアでは、カウンターでエスプレッソ(コーヒー)を立ち飲みすれば、テーブルに座って飲むよりも3分の1から半分の値段ですむ。野宮さんはそのシステムもとり入れて、座って飲めば150円のエスプレッソを立ち飲みでは100円に設定した。イタリアのように、なじみ客が一日に何杯も飲みに来ては気分転換をしてほしいと願ってのことだ。夜はローマの名物料理などを出して、ワインとともにお客に楽しんでもらっている。

一方、東京には、バールでありながら、珍しい郷土料理パスタを出す「バール・イタリアーノ・ダ・パオロ」(東京都練馬区)がある。都内のイタリア料理店などで修業を積んだオーナーシェフの早川健一さんが料理メニューに力をそそいでいる。

看板メニューは3つある。1つめは、長野県の北八ヶ岳にある農場「ボヌムテッレ」などの有機野菜を使ったサラダだ。玉ネギやハチミツやマスタードを入れるなどして、昼と夜でドレッシングの中身を変えている。2つめは、「ピッツェリア・ジターリア・ダ・フィリッポ」(東京・練馬)が窯焼きする生地を使ったパニーノとピッツァである。この生地には、世界大会で受賞歴があるピッツァ職人の技が生かされている。3つめは、早川健一さんの妻で、木工職人の早川紀子さんが彫った木型による、メダル型手打ちパスタ「クロゼッティ」である。

紀子さんも料理学校出身で、イタリアの北西部リグーリア州にしかないメダル型パスタの木型の美しい模様に魅せられ、木型職人に弟子入りして学んだ。同州では結婚式のとき、両家の紋章を彫りこんで木型をつくったという歴史のあるパスタだが、いまでは伝統的な木型をつくれる職人は数人しかおらず、そのひとりが紀子さんである。同州には山側でつくる「クロゼッティ」と、海側でつくる別の名前のメダル型パスタがあり、店で出すクロゼッティには山でとれる食材のソースしか合わせないところまで健一さんはこだわっている。

「イタリアのバールの心地よさを再現したかったんです」と早川健一さんは言う。「住宅街と飲食街が隣接している練馬という街は、お互いの顔が見えやすい。だから、バールが、街の人びとが顔を出すだけでもよい、日常にある空間であってほしいのです。コロナ禍中にはじめたテークアウトも、お客様の要望にできるだけ応えるようにしています」。紀子さんも、「いまはコロナ禍がありますが、テーブルが空いているのに、(店員や住民とおしゃべりしたくて、)カウンターにびっしり人が並んでいるという光景も珍しくないんですよ」とつけ加える。そう、バールは、人と人とが交差し、交流するクロスポイントなのだ。

イタリアでは、EU(欧州連合)統合による通貨統合のあおりを受け、都会の料理店の価格がのきなみ上がって若者や若い観光客の行き場がなくなり、バールが料理を出しはじめたといういきさつがある。「アペリティーボ(『食前酒』の意味)」という時間帯を設けて、16時~19時くらいの時間帯に行くと、アルコール類を1ドリンク頼めば、カウンターに並んだ軽食が食べ放題というシステムができたのだった。日本でも料理人が営む一部のバールが料理を出し、テークアウトも受け、一方でバリスタが経営するコーヒー専門店としてのバールも愛されている。コロナ禍をきっかけに、バールのあり方も変わっていく。

中村 浩子
イタリア食文化文筆・翻訳家。東京外国語大学イタリア語学科卒。イタリアの新聞社『ラ・レプブリカ』極東支局長助手をへて、文筆・翻訳へ。著書に『イタリア薬膳ごはん』(共著)『「イタリア郷土料理」美味紀行』、訳書に『イタリア料理大全 厨房の学とよい食の術』(共訳)『スローフード・バイブル』。

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