「試行錯誤の末、『福一』の鶏白湯は鶏の肉を使った塩ベース。『鶏の骨』のそれは、鶏の骨に少量の豚骨を加えた薄口しょうゆベースとしました。『福一』バージョンは、上品で高級感が漂う仕上がり、『鶏の骨』バージョンは、B級感が漂うジャンキーなテイストに。我ながら、良いあんばいで仕分けることができたのではないかと思います」(石曽根店主)
開業から10数年、いまだに長蛇の列
石曽根店主のそのコンセプトが世の中に受け入れられていることは、『鶏の骨』の開業から10数年もの歳月が経過しても店の前に連なる長蛇の列が、雄弁に証明している。
コンセプトだけではない。味の方も、もちろん超一級だ。スープは鶏の部位ごとに異なる寸胴でダシを採り、仕上げの段階でそれぞれの寸胴のダシをひとつに合わせる「鶏と鶏のWスープ」の手法を採用。また、鶏の骨に少量の豚骨を加え、揺るぎのないうま味の土台を構築するテクニックも駆使している。
そのような工程で創られたスープは、すすった瞬間、濃密な鶏エキスが大河の奔流のようにほとばしり、味蕾(みらい)を直撃。食べ進めるにつれて、体感的なコク深さがグイグイ加速しレンゲを持つ手が止まらなくなる、会心の出来栄えだ。

麺も、「鶏の骨ラーメン」専用のものを京都市内の名門製麺所『麺屋棣卾(ていがく)』へと特注し、共同で開発したものを用いるなど抜かりがない。
今年から、知宏氏のご子息である禎宏氏も、中華のシェフからラーメン職人へと転身。「ラーメンという食べ物について勉強を重ねるうちに、その奥深さをまざまざと実感。今ではすっかり、ラーメンの魅力の虜(とりこ)になってしまいました」と笑う。
ご子息という心強い味方を得て、今後、親子の二人三脚で、『鶏の骨』がどのような店へと成長し、躍進を遂げていくのか。これからの展開が、楽しみで仕方がない。

★幸福軒(千葉市・葭川〈よしかわ〉公園)
~ ラーメンで幸せになってもらいたい。千葉官庁街の胃袋を充たし続ける実力店 ~
続いてご紹介するのは、千葉市中央区に2000年7月に開業し、官庁街の路地裏に静かにたたずむ九州とんこつラーメンの『幸福軒』だ。今回ご紹介する2つが、いずれも千葉県内の店なのは、同県が濃厚動物系ラーメンの優良店の宝庫だからに他ならない。『鶏の骨』と『幸福軒』を採り上げたのは、提供される1杯の完成度が極めて高いにもかかわらず、世間からの認知度がそれほど高くないと感じていたからでもある。
千葉においても、『久留米豚骨ラーメン 三代目 沖食堂』(木更津市)、『ラーメン濱野家』(市原市)のような知名度が高い新進気鋭の店や、『ちばから 市原本店』(市原市)、『博多長浜らーめん もりや』(松戸市)のような全国的な知名度を誇る実力店は数多く存在する。これらの店と肩を並べるほどの実力を兼ね備えながら、諸々の条件不利によって、知名度が実力に追い付いていない店があれば、ぜひ世に知らしめたい。それが千葉のこの2店だったということである。