経営や経済にも通底する原理

後半の4章は経営と経済の世界での中二階原理の考察を展開する。対象とするのは経営戦略、組織マネジメント、企業統治、市場経済システムという4つの分野だ。行き過ぎた株主主権や市場原理主義といったものを中和する機能が中二階の原理として差し込まれることで、現場の力を引き出したり、カネの論理一辺倒ではない人のネットワークが生まれたりすることを著者はじっくりと解き明かしていく。

中二階の原理にはもちろんマイナスの副作用もある。それでも副作用を注意深く視界に入れながら、中二階的発想を運用・発信すれば、その小さな異質の主張が世界システムに多様性をもたらしうるのではないかと著者はいう。中心にある二階の原理を軸に据えつつ中二階の原理をミックスしてシステム全体が動いていく。そんな原理を意識して改革を進めていけば萎縮しているように見える日本が自信を取り戻すことができるのではないか。著者のエールが聞こえてくる。

「メインの平台に置いているわけではないのに反応が出た」と店舗リーダーの河又美予さんは話す。日本論は注目されることが多いが、著者が経営学の泰斗ということもあってビジネスパーソンの関心を引いたのかもしれない。

1位は23年版の『会社四季報業界地図』

それでは先週のランキングを見ていこう。

(1)「会社四季報」業界地図 2023年版東洋経済新報社編(東洋経済新報社)
(2)ジェイソン流お金の増やし方厚切りジェイソン著(ぴあ)
(3)中二階の原理伊丹敬之著(日本経済新聞出版)
(3)入門Web3とブロックチェーン山本康正著(PHP研究所)
(3)「静かな人」の戦略ジル・チャン著(ダイヤモンド社)
(3)佐久間宣行のずるい仕事術佐久間宣行著(ダイヤモンド社)
(3)お金が貯まる人は、なぜ部屋がきれいなのか黒田尚子著(日本経済新聞出版)
(3)数値化の鬼安藤広大著(ダイヤモンド社)
(3)さあ、才能(じぶん)に目覚めよう 新版トム・ラス著(日本経済新聞出版)
(3)金持ち父さんのキャッシュフロー・クワドラントロバート・キヨサキ著(筑摩書房)

(リブロ汐留シオサイト店、2022年8月29日~9月4日)

1位は業界研究ムックの最新版。今年は例年以上に出足がいいという状況はこの書店でも同じだった。2位は、IT企業の役員でもありタレントでもある厚切りジェイソン氏によるマネー本。2021年11月刊で、息の長い売れ筋になっている。同数の3位に8冊が並ぶ。そのうちの1冊が今回紹介した日本論だ。ここ半年ほどの間に本欄で紹介した本やロングセラーのマネー本、自分の強みを知る定番の本などが並び、力強い新刊が不在という状況を映し出している。

(水柿武志)

中二階の原理 日本を支える社会システム

著者 : 伊丹敬之
出版 : 日経BP 日本経済新聞出版
価格 : 1,980 円(税込み)