――政策起業家は社会起業家とどう違いますか。社会起業家として子育て支援事業を手掛け、そこで直面した課題を解決するため、政策を提言し実現する政策起業家になったということでしょうか。

「僕はたまたま社会起業家をやって政策起業家になっている。必ずしも事業をやっていなければ政策起業家になれないわけではない。民間の立場から政策提言をし、政策をつくっていくことにかかわっていれば、みな政策起業家だと考えている」

――長く子育て支援を手掛けてきて、行政の側に民間との向き合い方に変化は感じられますか。

「10年ひと昔だ。1990年代くらいまでは官僚に『政策をつくるのは自分たちしかできない』という自負が大いにあった。官僚は今、著しく疲弊している。ステークホルダーを審議会に集めて、そのコンセンサスを政策にするという形も、ステークホルダーの人たちが必ずしもその業界を代表していないという問題がある。加入率の低い労働組合は労働者を代表しているのかということが各所で起きている。業界団体の人たちだけを呼んでも効果的な政策はできない。その領域に一番詳しい民間人が入って政策の種をまき、育てるのが現実的だ」

霞が関からは早期退職が相次ぐ

――霞が関は若い人の退職が相次ぎ、官僚になろうという人も減っています。これからの公共サービスの政策立案はどのような形になっていくと考えますか。

「政策立案の多元化が起こると思う。これまで官僚が独占していた政策立案を、社会のさまざまなプレーヤーたちが担っていく。その象徴が政策起業家になる。これまでは業界ロビー団体や業界団体の一部の政策担当者がロビイストとして要望していた。そうした業界益でなく、社会益、公益に資する政策起業を行っていくプレーヤーたちが増えていくべきだ」

――政策起業家が増えていくうえで、課題はありますか。

「米国などでは政策起業家が寄付を集めてシンクタンクをつくり、政策を打ち込んでいる。日本の場合、シンクタンクは省庁からシステムや調査の受託をしていて、米国のシンクタンクのような機能はない。日本ではまだまだ政策起業家は生まれていないのが現状で、バックアップする寄付者の存在が大事だ。目の前の飢えている人たちにパンを渡すことだけが寄付ではなく、世の中の制度やルールを変えていくことにも寄付は使える。こうした認識が広がることが大事だ」

――クラウドファンディングなどは活用できますか。

「クラウドファンディングはプロジェクト型で、何かのプロジェクトを立ち上げる際はよいが、継続しない。多様な寄付のチャネルが必要だ。継続的にするにはサブスクリプション型の寄付が重要だ。ふるさと納税も税額控除で自分の腹を痛めずに寄付でき、大きなツールになる。公共サービスを担っているのは自治体だけでない。NPO版ふるさと納税があれば寄付が集めやすくなり、多様な市民社会の形成に役立つ」

(編集委員 斉藤徹弥)

「デンシバ Spotlight」の記事一覧はこちら

今、転職を検討しているあなたへ / 日経転職版

同世代の年収っていくらぐらい?

日経転職版でチェック

>> 年収チェックはこちらから