「『ひとりリヴァンプ』って、ものすごく大変です。いきなりコンビニに入ったって分からない。そこで最初の3カ月はひたすら店と工場を回り、話を聞き、おにぎりなら山田さん、加盟店契約だったら田中さん……とキーパーソンをつかむことに徹します。それからゲームプランを考える。ロッテに来てすぐに全工場を回り、3カ月ほどで150人くらいにインタビューしました。今はチョコなら誰、ガムなら誰と分かっています」

多様な業種の企業経営に携わってきた。「企業に飛び込んだらまずキーパーソンを見つけること。ロッテでも3カ月で150人くらいにインタビューしました」 撮影:筒井義昭

「そのやり方の原点は旭硝子にあるんです。最初に化学品の工場に入ったらちんぷんかんぷん。理系の同期は会議室でいっぱしに発言する。そこで僕はスイッチが入り、分からないことは絶対先延ばししない、と決めました。毎日毎日工場のおやじに怒られるギリギリまで質問をしまくりました。それを2年間やり続けて、会議では具体的なファクトに基づいて発言できるまでになりました。机上の空論で考えてもうまくいくわけがない。皆の意見を聞き、会話をしながら、改革の適切なスピード感や新規事業の領域なんかを考えていくんです」

「70歳で起業」の夢 まだまだ成長

企業再生にはプレッシャーがつきもの。挑戦するリスクも相当ある。

「自分は回遊魚みたいなもので、泳がないと酸素がなくなって死んでしまう。困難な時にはエネルギーレベルを上げてやるしかないし、そうじゃないと元気がなくなりそうです。ファーストリテイリングに転職するときに、守られた中で過ごした3年と、怖くてもボコボコになっても鍛えられた3年と、どちらの自分が成長しているのかと考えました。やっぱり、挑戦するリスクより、挑戦しないリスクの方が怖いんです」

「ロッテにも、ハードルがたくさんあります。メガブランドであるガーナミルクチョコレートは何十年もきちんとキャッシュフローを生み続けている。そこで設備投資して例えば健康事業をやるにはどうするか。企業文化を変えていく、勝てる可能性のあるものを見極めていく。いきなりドン!とやるんじゃなくて、スモールサクセスで積み上げる方がいいかもしれない。挑戦の仕方をあの手この手で考えていく。僕みたいな男は順風満帆なパーフェクトな会社に呼ばれるわけがない。チャレンジがあって、変わんなきゃいけない会社に呼ばれるんです。だから、面白い」

日本の雇用問題の1つが人材の流動化が少ないことだと考えている。自身はスキルを磨きながら80歳ぐらいまで現役で挑戦を続けたい。

「流動化できるようなスキルを身につけるためには、40代くらいで自分のキャリアをもう一度見つめ直して、違うことにチャレンジする、という人の割合が増えていく方がいいと思います。僕はみんなに迷惑かけない範囲で、80歳くらいまでやりたいな。実は、沢田さんと、70歳くらいで起業しようって話しているんです。簡単じゃないですけどね」

(聞き手はMen's Fashion編集長 松本和佳)


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