SNSでバズる人間くさいキャラ

51年に現在の社名に改め、その4年後の55年には東京証券取引所に株式を上場。信用力も高めた。今も第1部に上場している(名古屋証券取引所第1部にも上場)。歌謡曲が広まると、ザ・ピーナッツやボニージャックスといった人気歌手にCMソングを歌ってもらい、さらに知名度を高めた。テレビCMでも漫画家の加藤芳郎さん、俳優の藤田まことさんなど、時代ごとの有名人を起用して、販促につなげた。

こうしたメディア広告がブランドの浸透を助け、薬酒の代表的な商品として定着。現在では「ライバル的な存在が見当たらない」(鳥山氏)という状況だ。

薬用養命酒のSNSキャラクターの「ビンくん」

近年の人気を支えるのは、複数の公式SNSを組み合わせた、立体的なPRだ。相次ぐキャンペーン企画がファンを増やしてきた。告知の「主役」的な存在になっているのが「薬用養命酒」のボトルをかたどったキャラクターの「ビンくん」。名前の通り、ボトルそのものを擬人化した、目も鼻もない姿だが、不思議な愛嬌(あいきょう)を帯びている。

「ビンくん」の誕生に関わった鳥山氏は「つっこみどころは多いけれど、見た人に語ってもらうには、ゆるく楽しいキャラクターのほうが都合がいい。ちゃんと考えたうえで、あえてはっちゃけている」と明かす。医薬品であり、薬機法の規制を受けるので、商品の効能や成分に関して、ユーザーとコミュニケーションするのは、SNS上では難しい部分が多い。そうした決まり事を離れて、ポジティブに立ち回るには、「ただの器」であるビンくんという存在は使い勝手がいいという事情もあるようだ。

「ビンくん」の活躍はSNSユーザーをざわめかせ続けている。いわゆる「中の人」がボトル形の着ぐるみをまとっているわけだが、同様の着ぐるみキャラクター「ふなっしー」を連想させる暴れっぷり。長方形のパッケージを擬人化した「ハコさん」も登場した。ボトル形のキャンペーングッズが相次いで企画され、抱き枕やスマートスピーカーなどは応募数が予想を上回るほどに達した。「SNSでの拡散を視野に入れて、あえてネタ的な仕掛けを選んでいる」(鳥山氏)というアプローチが当たっているようだ。

適度にふざけているところが一連のキャンペーンの持ち味だ。たとえば、スマートスピーカーの企画では、本来、「電源を入れます」「天気は晴れです」などと、忠実に応答するはずのスマートスピーカーが素直に応じないうえ、すきあらば養命酒を推してくる。「いわゆる『ゆるキャラ』は既にいっぱいいるから、平均的なかわいらしさはいらないと考えた。マーケティング部員と位置づけて、人間くさく振る舞う存在に仕立てている」(鳥山氏)という。

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「不変×可変」の掛け算