
大切な人と一緒に行きたいお店を選べるサイト「大人のレストランガイド」から、安心して通える「行きつけにしたい店」をピックアップして紹介します。
うどんのつゆの色が関東と関西で違うのはよく知られているが、実は天ぷらもしかり。揚げる際に使う油も違えば、衣の色や天つゆの味だって違う。食い道楽の街・大阪で培われた老舗の関西風天ぷらを、東京・銀座で味わえる店が「天ぷら 一宝(いっぽう)」の 東京店だ。大阪・江戸堀に本店を構え、その流儀そのままに真新しい紅花油のみを使った油を感じさせない関西風天ぷらは、新たな食の味わいと楽しさを広げてくれる。
一宝東京店は中央区銀座6丁目の交詢ビルディング5階にある。のれんをくぐると、その先に個室やカウンターテーブルが広がる。一宝の歴史は1850年代にまでさかのぼる。初代は油屋を営んでおり、その副業として天ぷら屋を始めたそうだ。当初は「天寅(てんとら)」の屋号で始めたが、3代目が神戸・三宮に支店を出店する際の屋号が「一宝」だった。それからは屋号を「一宝」に統一し現在、関西と東京、香港に計4店舗を持つ。東京店の歴史は1962年(昭和37年)からで当初は八重洲にあったが、2004年に現在の銀座の地へ移転した。

大阪の本店には場所柄、関西財界の著名人らの客も多く、一宝という屋号の名付け親は「現在の阪急阪神東宝グループの創業者、小林一三氏」という。自らの名前と彼が愛した宝塚歌劇から一文字ずつとって命名した、と一宝の5代目で東京店代表の関勝さんは明かす。
自らも天ぷら職人である関さんは、ユニークな経歴の持ち主でもある。中学から大学まで関西の有名私立、同志社で過ごし、大学卒業後は約2年間、米国に留学、レストラン経営学を学んだ。その後、家業を継ぐために帰国し、大阪の本店で天ぷら職人としてイチから修業を開始。揚げる技術などは、祖父の代から厨房に立つ料理長にみっちりと仕込まれた。