変化しないことが最大のリスク

そう考えると、企業も人も「変化しないことが最大のリスク」なんですね。それは肝に銘じておいた方がいいでしょう。会社の規模や歴史にかかわらず、従来の顧客を相手に安定的に稼いできたビジネスはそのままのやり方ではジリ貧になるでしょうし、逆にスタートアップ企業や従来型の企業であっても、変化に対応して自分たちもトランスフォームできる会社はチャンスです。今はデジタルトランスフォーメーション(DX)が流行ですが、私はビジネスの最重要課題がDXだとは全然思いません。デジタルだけじゃなく、人々の生活そのものが大きく変わっているので、LX(ライフトランスフォーメーション)みたいなもっと大きな視点で物事を捉えた方がいいと思います。

例えば、コロナ禍を境に暮らしについての考え方もすっかり変わりました。飲食のあり方もそうですし、家で過ごす時間が長くなったために観葉植物が飛ぶように売れ、育てるのが間に合わないとか、DIY(日曜大工)やリフォーム関連の需要が伸びていると聞きます。DIYが盛んな米国はDIY市場規模が日本の10倍近くもあり、米ホームセンター最大手のホーム・デポの時価総額は約4000億ドル超。トヨタ自動車の約2550億ドルを大きく上回っています。もちろん日本が一気に米国のようなDIY大国にはならないでしょうが、それでも人々の住まいに対する価値観が変われば、関連するビジネスだって大きく変わるでしょう。そういうことが今、あらゆる分野で起きているのです。

「新規ビジネスを考えろ」「イノベーションを起こせ」と言われ、頭を悩ませているビジネスパーソンも多いと思います。イノベーションというと、日本ではすごい「ひらめき」とか「インベンション(発明)」とかに近いニュアンスで捉えられているようですが、そうじゃなくて、時代に合わせて変化することこそがイノベーションだと思います。だから、闇雲に「何かすごい発明を」と考えるのではなく、これまでの常識にとらわれずに、まずは今起きている変化にちゃんと気づいて「流れ」をつかむ。それが何より大事なんじゃないでしょうか。

松本大
1963年埼玉県生まれ。87年東大法卒、ソロモン・ブラザーズ・アジア証券を経てゴールドマン・サックス証券でゼネラル・パートナーに就任。99年マネックス設立。2004年マネックス・ビーンズ・ホールディングス(現マネックスグループ)社長、13年6月から会長兼社長。08年から13年まで東京証券取引所の社外取締役、現在は米マスターカードの社外取締役を務める。

(ライター 石臥薫子)

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