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映画の名せりふはコミュニケーションにも役立つ(写真はイメージ) =PIXTA

映画の名せりふはコミュニケーションにも役立つ(写真はイメージ) =PIXTA

映画を見る機会が増えた。外出がままならない中でも、映像ソフトや配信サービスを使って、古今の名作を楽しめる。映画は言葉の宝庫。プロが磨き上げた名せりふからは言葉を操るヒントをもらえる。

やたらと不寛容な物言いは、はたで見聞きするだけでも、気持ちがささくれ立ってしまうが、そんなときに思い出したいのは、「お熱いのがお好き」の「完全な人はいない」というせりふ。女装したジャック・レモンは大富豪から求婚されて困り果て、カツラを取り捨てて、「俺は男だ」と叫ぶが、動じない大富豪が返した言葉がこれ。懐が深いどころではない。ユーモアや人生観もにじむ見事な切り返しだ。

相手の反論をまっすぐ言い返すと、いさかいに至りやすい。いなしたりかわしたりといった、しなやかな受け答えは場の緊張をやわらげ、対話を軟着陸に導く。

人生の見通しはつきにくい。だからといって、おじけてばかりでは、物事が進まない。「フォレスト・ガンプ」で主人公フォレストの母はそのことをよく知っていたようだ。死を前に「人生はチョコレートの箱のようなもの。開けてみないと分からない」と、息子に語りかけた。

ゴールやメリットが事前にはっきり見えていないと、乗り気になれないというのでは、選択肢が狭まってしまう。行きすぎたギャンブルは考え物だが、人生に台本はない。箱を開ける、いくらかの勇気は必要だろう。この言葉は座右の銘となり、フォレストの数奇な人生を支えていく。人生の節目でチャレンジするかどうかを判断するときに思い出したい言葉だ。

善なる名せりふばかりではない。悪役的なキャラクターも印象的なせりふを吐いている。「ウォール街」で主人公の投資家ゴードン・ゲッコーは「欲は善だ」と言い放つ。ここで欲を指した単語は「greed」。意味は「強欲」だ。とめどないマネーゲームを全肯定する態度は、今に続く格差社会を呼び込んだ資本家哲学に通じる。

脱炭素化へ資金を投じる、近ごろの投資家はこのせりふをもじって「グリーン・イズ・グッド」というフレーズを語るようになってきたらしい。韻を踏んだ巧みな言い換えだ。こういうしゃれを理解するうえでも、映画の有名なせりふは頭に入れておいて損はない。

自分流の言い換えができれば、表現の幅が広がる。元ネタを知らない聞き手のためには、「かつて映画『ウォール街』では『欲は善』と言いましたが~」といった説明を言い添えたほうがよさそうだ。

文言自体ではなく、言い方が面白い名せりふのケースもある。たとえば、「ファイト・クラブ」で示される、ファイト・クラブのルールがそうだ。

ルールその1は「ファイト・クラブのことを口外しない」。そして、その2は「絶対にファイト・クラブのことを口外しない」だ。実際にはルール1と2は同じ英語であり、あえて2度繰り返すことによって、きつく戒めるニュアンスを伝えている。ビジネス現場でも本気感を醸し出すねらいで使う余地があるかもしれない。

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