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福岡・糸島半島に現代版塩の道 プリンと合わせ新感覚

魅惑のソルトワールド(61)

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NIKKEI STYLE

塩は人が生きる上で欠かせないものだからだろう。かつて塩の生産地は経済的に栄え、「塩の道」を通じて各地へ塩が運ばれる過程で沿道も順次発展――国内外の歴史を振り返ると、そんなケースが少なくない。玄界灘に突き出た福岡県西部・糸島半島にある製塩所が今、現代版塩の道の様相を呈している。訪れる観光客が増え、地域全体が活性化している。そこで今回は、その製塩所が人気を博すようになった様々な取り組みについて紹介したい。

その製塩所は「またいちの塩」をつくる「製塩所 工房とったん」(福岡県糸島市)。玄界灘の内海と外海がぶつかりあう糸島半島の西端にある。17年ほど前にこの地に製塩所を構えたのが、平川秀一さん。もともと料理人で、海外に滞在していた一時期、塩とオイルだけで食べるサラダのおいしさに感銘を受け、塩に興味を抱くようになった。帰国した時期は、塩の専売制度が解禁になったころと重なる。塩の選択肢ががぜん増え、さまざまなタイプのものが登場するようになったタイミングだった。

引き続き料理の仕事を続ける中で、塩が違うと料理の味わいが変わることを体感する日々だった、といい、塩の名産地のひとつ、熊本県の天草地方に通い、製塩について勉強した。そうこうするうち、塩づくりへの思いが募り、よい海水を探し求め、たどりついた先が人里離れた糸島半島の西端だった。

初めから順調だったわけではない。当時、まだ塩は安価なものというイメージが強く、当初は地元の人にもなかなか受け入れてもらえなかった、という。塩作りを始めて数年は、工房を訪れる人も少なく、夜は福岡市内の料理店で働き、昼間は塩づくりにいそしむ生活が続いた。

それが今、週末ともなれば数千人の観光客や地元客が訪れる人気工房に変貌した。工房内を自由に見学し、塩作りを目の当たりにできるようにしたことや、休憩所を設け、ベンチやブランコなどを設置したことも奏功したが、最大のきっかけは平川さんが長年かけて開発した「花塩プリン」だった。

「花塩プリン」は、とろとろっとしたクリーミーな食感が楽しめ、工房から5キロメートル圏内で見つけた牛乳と卵を素材に、1つ1つ手作りしている。食べる時に「またいちの塩 花塩」を再結晶させた「潮の粒」をかけて食べるのがミソで、これが絶妙な甘じょっぱさと、あとひくおいしさを演出し、人々を魅了する。「花塩」は塩を生産する時に少量だけできる一番塩のこと。それをさらにプリン用に再結晶させるのだから、実に手が込んでいる。

そのかいあって、この「花塩プリン」のおいしさは徐々に口コミで広がり、今では「花塩プリン」目当てに年間10万もの人が製塩所へと押し寄せる。そして、必ずといっていいほど「花塩プリン」を楽しみ、持ち帰り用にも購入する。定番の「花塩プリン」のほか、今では「焦し塩キャラメルプリン」や「花塩ごまプリン」、期間限定の「生チョコナッツ塩プリン」などの姉妹品も登場し、どれも好評を博しているという。

プリンだけでなく塩そばも

なぜ製塩所がプリンなのか、と思われるかもしれない。塩は素材そのものであり、料理やスイーツに使われて初めてその真価を発揮する。昔から、甘いものと塩は相性が良いとされ、さまざまなシーンで組み合わされてきた。ぜんざいや和菓子のあんこにも塩を用いる。甘いものに塩を入れることで、べたっとした甘さを引き締めたり、甘みを引き立てたりする。だから、プリンに塩を加えることも何ら不思議ではないのだ。もちろん、平川さんが料理人だったことも大きい。料理と塩にひたすら向き合ってきたプロが作るプリンが、おいしくないはずはない。

塩プリンが人気を博したことをきっかけに、今では製塩所へと続く道沿いにカフェやレストランや物販店がオープンし、地域の活性化をもたらしている。まさに、現代版「塩の道」といっていいだろう。

平川氏自身も塩プリン人気に慢心せず、塩のおいしさ、楽しさをもっと多くの人に届けようと、またいちの塩と地元の食材を生かした食事が楽しめる「ゴハンヤ イタル」や、イタルなどで使用している器などを購入できる「新三郎商店」、さらにはおいしい塩スイーツが楽しめる「sumi cafe」などをオープン。

昨年には、糸島の中心地に長い間放置されていた古民家を活用した「塩そば おしのちいたま」も開店した。福岡といえば、豚骨ラーメンが有名だが、製塩所ならではのシンプルな塩そばを提供、塩のおいしさを伝えているのはもちろん、糸島に若者を呼び戻すなど雇用面でも地元に貢献している。

製塩所工房とったんでは、SDGs(持続可能な開発計画)にも取り組む。おいしい塩は美しい海があってこそ。だから、月に1度は店を休みにして、スタッフ全員で海辺に打ち寄せられたプラスチックゴミなどを回収し、清掃活動に当たっている。

アイスカップに入って登場

花塩プリンはリターナブルな瓶を使っているが、塩はプラスチック製の袋に入れて販売していた。だが、「マイクロプラスチック問題にも取り組まなければ」という思いから、容器をプラスチック製のもの以外に切り替えられないかを数年前から模索。「こんな容器もいいんじゃないか」とスタッフから見せられたアイスカップに、「その手があったか!」と目から鱗(うろこ)が落ちる思いだったそうだ。

試行錯誤が続いた末に昨年、ついにアイスカップ容器への切り替えに成功した。塩の可能性を新たに広げていく取り組みを次々と繰り出す平川さんと「工房とったん」からは、今後も目が離せない。「花塩プリン」をはじめ、広島のチョコレートメーカー「ウシオチョコラトル」とコラボした塩チョコレート、塩ジンジャーエールなども展開しており、いずれも新三郎商店 またいちの塩のホームページ(https://mataichi.info/) から購入できる。ぜひ試してみてほしい。

(一般社団法人日本ソルトコーディネーター協会代表理事 青山志穂)

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