ワイン嫌いだった店主がワインにハマり、日々勉強

朝締めのアナゴの刺し身を用いた「黄金生あなご」(1貫249円)。ペアリングのお薦めワインはジョージアのオレンジワインだ

南フランスと北フランスの味わいはどう違うのか。スペインはどうなのか。学んだことを客に伝え、その知識を客から感謝されるうちに、さらにワインが面白くなっていった。「日中、ワインの学校で勉強したことは、その日の夜にはお客様にそのまま伝えていた。こう話しても伝わらなかったけど、こんな風に話すとお客様に分かっていただけたなど、どんどん表現をブラッシュアップできたのも、楽しさにつながりました」

ワインに目覚めた綱嶋さんが同店のコースでペアリングを薦めているワインには、シャンパン以外で日本で人気の高いフランスやイタリアのワインが見当たらない。「フランスのワインって、それ単体では完成されていなくてペアリングありきだと思うんです。料理を合わせることで完全に楽しめるようになる。飲みなれていない人は、単体でおいしいワインの方が楽しい。また、その方が、幅広い料理に合わせられるんです」

コースでペアリングを薦めているワインの一部。左から、ジョージアのオレンジワイン、マスカットベーリーAを用いた日本の赤ワイン、南アフリカのデザートワイン

ペアリングリストにある海外ワインの産地は、近年大きな注目を集めている南アフリカやジョージア。ワイン発祥の地といわれるジョージアは、「クヴェヴリ」と呼ばれる土中に埋めた素焼きのつぼで熟成させたオレンジワインをラインアップ。オレンジワインとは、皮などと共に発酵させた白ワインのことで、独特のボリューム感がある。一方、南アフリカは、すっきりとした酸が特徴の白ワインや、ハチミツのような甘さがあるデザートワインをリストに加えた。綱嶋さんの話を聞くと、ワインを飲みながら世界地図を思い浮かべたくなる。

サンチャモニカは、綱嶋さんが手掛ける2つ目の店。1店目は東京・経堂のワイン居酒屋「酒ワイン食堂 今日どう?」、地名を織り交ぜた絶妙なネーミングだ。「店名が地元の方に受けて、2店目もそんな風にしたいと考えていた。それで、(米国の有名リゾート)サンタモニカをもじって店のある地名を入れた『サンチャモニカ』にしたんです」

経堂の店「酒ワイン食堂 今日どう?」のメニューもユニーク。写真は豚の角煮を串料理としたアイデア料理

これからも1店ずつ個性的な店づくりをしていきたいという綱嶋さん。「全く興味がなかった僕が180度変わるぐらい、ワインって面白い。それを発信していきたい」。次はどんな店を考えているのか、店名まで期待せずにはいられない。

(ライター メレンダ千春)

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