2022/2/8

育児・介護休業法の改正によって22年4月以降、企業には育児休業をとりやすい環境の整備が求められる。具体的には研修の実施や相談窓口の設置などだ。対象となる社員に対して個別に育休の制度を伝え、取得するかどうかの意向を確認しなければならない。同年10月からは休業中でも一時的に働いたり、育休を分割で取得したりすることも可能になる。従来以上に働き方の柔軟性が必要だ。

インターネット関連企業のショーケースで働く前田大地さんは、3月に妻の実家がある山形県に家族5人で移住する計画だ。きっかけは昨秋、第3子誕生に伴い約1カ月の育休をとったことだった。リモートワークが定着し、東京で暮らす理由がないことに気がついた。

夫の転勤によりフルリモートで仕事を続けている女性社員の特例がすでにあることから、人事に働きかけてフルリモート勤務を制度化してもらった。22年度からはパートナーの転勤や親の介護などで東京を離れる社員も働き続けることが可能になる。「選択肢が広がることで自律的な働き方が可能になり、会社へのエンゲージメント(愛着)も上がる」と前田さんは話す。

男性育休については以前から制度があるにもかかわらず、今も利用率は1割強にとどまる。育休中の男性ら約160人が参加するオンラインコミュニティー「パパ育コミュ」のアンケート調査によれば、育休を断念した理由として職場の「取得しづらい雰囲気」や「人員不足」をあげる人が最も多かった。このほか「自分にしかできない業務があった」「金銭面のめどがたたなかった」などが続く。

社員の年齢が上がるにつれ、自身の病気や家族の介護による休業も増えるだろう。コロナ禍では急きょ、仕事を休まざるをえなくなるケースもある。BCP(事業継続計画)の観点からも、今回の法改正を、働き方改革を進める絶好の機会と捉えてはどうだろうか。

正しい情報欠かせず
ファンタステクノロジーの尾平泰崇さんは、実は妻に言われるまで自身が育児休業を取れるとは思っていなかった。「大企業が用意する福利厚生」という認識だった。オンラインコミュニティー「パパ育コミュ」のアンケートでも、育休取得を断念した理由として「会社で制度が整備されていない」と答えた人は37.8%にのぼる。

育休は法律に基づく労働者の権利で、基本的には会社の規模にかかわらず男女とも利用できる。民間企業に勤める人の場合、休業期間中の給付金は雇用保険から出る。男性育休が普及するためには、こうした情報を正しく広げる努力も欠かせない。
(編集委員 中村奈都子)

[日本経済新聞朝刊2022年2月7日付]