重要な危険因子は、「過剰飲酒」「喫煙習慣などによって起こる慢性閉塞性肺疾患(COPD)」「糖尿病」「家族歴(親兄弟などに骨折した人がいる)」「ステロイドの服用」などです。そのほか、「胃の切除歴」「内分泌(甲状腺、副甲状腺)の病気」「男性の性腺機能の低下(LOH症候群)」もハイリスクです。特に前立腺がんの治療としてホルモン療法をしている患者の場合、急速に骨密度が低下することが知られています。

(萩野教授の話を基に作成)

リスクの高い人の骨をCT(コンピュータ断層撮影)やMRI(磁気共鳴画像診断装置)で調べてみると、本人も気付かぬうちに背骨(脊椎)が、押しつぶされるように変形してしまう骨折(脊椎圧迫骨折)を起こしていることもあります。それを腰痛やギックリ腰と思いこんで見逃してしまうことも多く、実際、脊椎の骨折の3分の2は、病院を受診していないという報告もあるそうです。

主治医と相談して骨密度検査のタイミングを逃さない

骨密度は、単位面積当たりの骨の重さで表されますが、重要なのはYAM値(ヤム値、Young Adult Mean:若年成人平均値)です。これは若年成人の骨密度を100%として自分の骨密度が何%であるかを示した数値で、YAM値が70%以下になると骨粗しょう症と診断され、骨折リスクが高まります。

女性の場合は、職場や自治体の「骨密度検診(骨粗しょう症検診)」を受ける人が増えていますが、男性の場合、骨密度を測定する機会は多くありません。ただ、慢性閉塞性肺疾患(COPD)や糖尿病などリスクのある人は、自分から主治医に相談することで、保険診療として定期的に骨密度を測定できるということを知っておきましょう。糖尿病は、YAM値が80%台でも骨折リスクが高いことが分かってきました。主治医に自分から「骨が心配なので検査を受けてみたい」と相談することも大切です。

検査にはDXA(デキサ)法、超音波法、MD法などがあります。DXA法が最も正確な骨密度が測定でき確定診断にも用いられますが、装置が大きく横になって測らなければならないため、受けられるのは地域の基幹病院などに限られます。主治医に紹介状を発行してもらうことが必要です。また、リスクのある疾患を持っている人以外は、外来などで骨密度の測定をすることはできませんが、人間ドックのオプション検査などで受けることはできます。

(図版制作 増田真一)

この記事は、「男女とも骨密度低下にご用心 命脅かす骨折とその原因『骨粗しょう症』!」(荒川直樹=科学ライター)を基に作成しました。

[日経Gooday2022年9月26日付記事を再構成]

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