医師たちのグループミーティングツールにも

医師と医師とのコミュニケーションも必要な時に必要な相手を「面会時間」を開放し、オンラインミーティングができます(図4)。

図4

その場合、ある医師が、ある製薬企業のMRから新薬の説明を聞いていたとします。それによってMRから聞いたAという医師が、Bという医師に情報を伝搬することができます。通常、医師は医師の話すことを信用します。知人の医師に、この薬は、こういうベネフィットが多い、という解説をされると正しいコミュニケーションがとれます。

大学病院や一般病院などの「教室」のグループミーティングも簡単になります。院内の「勉強会」「症例検討会」「抄読会」のみならず、他の医療機関の医師達との「病診連携」なども楽になります。大学病院の教授、准教授講師たちが、コロナ禍が終わったら移動する時間が増え疲れる、と聞くことが増えました。よって、かなりの多くの医師達に歓迎される医療DXになるだろう、と確信しています。

この「グループミーティング」機能はもちろん薬剤師間同士でも利用できますし、医師の部下である医療スタッフ達も、同じメリットを享受できます。医師、看護師、ケアマネジャー、介護士などが参加すれば「介護」や「ホスピス」などの領域でも、威力を発する機能となります。

“日本国”の制度に対するベネフィット

2024年4月に始まる医師の時間外労働の上限規制が始まります。そうなると、仮に国の構想通りに時間外労働の削減が進んだら、大学病院で働く医師の外勤はできなくなり、日本中の開業医や中小医療機関にとって深刻な社会問題が起こります。その意味でも、本稿で紹介した医療DXは医師の可処分時間を有効に使うための時間効率を高め、医師の働き方改革につながり、日本国の急務で深刻な未来の社会問題に対し解決策を提示することもできそうです。

鈴木吉彦
1957年山形県生まれ。83年慶大医学部卒。東京都済生会中央病院で糖尿病治療を専門に研さんを積む。 その後、国立栄養研究所、日本医科大学老人病研究所(元客員教授)などを経て、現在はHDCアトラスクリニック(東京・千代田)の院長として診療にあたる。

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鈴木医師が院長を務めるHDCアトラスクリニックのHPでは、専門である糖尿病に関する情報を幅広く紹介しています。

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