女性活躍が叫ばれた第2次安倍晋三政権以降、女性の就業率は上昇したが、間に合わなかった人たちがいる。2010年ごろまでに妊娠・出産を迎えた40代を中心とした層だ。当時は保育所の定員も少なく、出産後は仕事を諦めざるを得ない女性が多かった。年齢のために再雇用のハードルも高い。一度は正規雇用から離脱した女性たちの再挑戦を取材した。
100社以上応募して16年ぶりの正社員に
「私、働いている」――。宮崎美恵子さん(東京都在住、49)は21年、約16年ぶりに正社員になった。勤務先は通信制のインターナショナルスクール「東京インターハイスクール」(東京・渋谷)。入学検討中の中高生や保護者に学校説明などをする。任される仕事があることがうれしく「渋谷の街を毎日はねるように通勤した」。相談に応じた生徒が入学後に生き生き活動する様子を見るとやりがいも感じるという。
宮崎さんは大学卒業後、1990年代に部品メーカーに総合職で入社。得意の語学を生かし海外営業を担当した。残業は当たり前で、結婚後も「めちゃくちゃ働いた」。だが営業職の女性は初めてだったため子育てと両立する先例もなく、妊娠を機に退職。4人子を産み、子育てに専念した。
四男が幼稚園に入った17年ごろ再就職を考えた。前職と同じ営業職に応募したが、ほぼ門前払い。職種を広げたが不採用になることがほとんど。やっと面接まで進んで仕事が好きだと熱く話すと「熱意は不要」と言われる。
契約社員でも働いたが、責任ある仕事はさせてもらえない。100社以上に応募した。「母として必死で生きてきたのに社会的には評価されないと絶望した」と振り返る。

保育所や育休拡充の恩恵逃す 非正規多く、可処分所得「水没」
12年12月に発足し「女性活躍推進」を掲げた第2次安倍政権以降、女性の就業率は顕著に上昇した。12年から21年に保育所などの利用定員は約78万人分増え、育児休業給付金の支給率引き上げなど制度拡充も進んだ。大和総研の是枝俊悟主任研究員は「それまで仕事か子どもか選択を迫られる正社員女性が多かったが、転換期になった」と話す。
大和総研によると、有配偶女性の就業率は12年から21年にかけて20代で20ポイント以上、30代も10ポイント以上上昇。制度拡充により出産後も正規雇用にとどまる人が増えたとみられ、上昇分の大半を正規雇用が占める。
