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米エール大学助教授の成田悠輔氏。リモートでユーチューブ番組に出演するなど多忙な日々が続く(日経テレ東大学チャンネルより)

米エール大学助教授の成田悠輔氏。リモートでユーチューブ番組に出演するなど多忙な日々が続く(日経テレ東大学チャンネルより)

米エール大学助教授の成田悠輔氏は、データやソフトウエアなどのデジタル技術を活用した社会制度・政策のデザインが専門。企業や自治体、NPOなどと連携して技術の社会実装も手がけるなど幅広い分野で活躍する。東京大学卒、米マサチューセッツ工科大学(MIT)で博士号(Ph.D)を取得、現在はエール大学で教鞭(きょうべん)をとると聞けば、エリート然とした人物を想像するが、いわゆるエスタブリッシュメントとは異なるまなざしを持つ。その背景には何があるのか。

アルコール依存症でギャンブル癖のひどい父のもとで育ち、自身はひどい睡眠障害と「世界に対する違和感」から私立麻布中・高時代はずっと不登校だった成田氏。高校生の時に父が失踪し、その後、母がくも膜下出血で倒れるという不運にも見舞われた。母の意識不明の状態は2、3カ月続き、かろうじて成り立っていた家計はついに破綻。弁護士や親族の助けを借りながら、母の自己破産手続きを進めざるを得なくなった。10代にして経験したこうした出来事が、成田氏のものの見方に大きな影響を与えたことは想像に難くない。

東大受験きっかけに社会復帰

そんな同氏が、社会復帰するきっかけとなったのは東大入学だった。「ペーパーテストという不毛なゲームで勝ちさえすればどんな人格破綻者でもよしという日本の教育制度に、本当に感謝している」という。

「アメリカのように在学中の成績や課外活動、面接での人物評価などが問われるAO入試だったら、僕のような人間がトップ大学に入るのは無理でしょう。今、日本でもAO入試が広がっていますが、個人的な経験からいってもAO入試を全面化するのはやめたほうがいいと思います。『人間を総合的に判断する』というAO 入試では結局、自分が何者かを18歳時点でスラスラとプレゼンできる八方美人的な人しか残らなくなってしまう。そういう人は恵まれた環境で育った人が多く、多様性と正反対になってしまうことが多い。必ずしもペーパーテストである必要はありませんが、なんらかの客観的尺度を用いて、一定水準をクリアすればどんな人間でも受け入れるという仕組みは担保したほうがいい。そういう偏った尺度がいくつも乱立している状態が望ましいと思っています」

現在、公共政策の中でも特に教育制度の設計を専門とする成田氏だが、米国事情を深く知る立場からこんな指摘もする。

「日本ではほとんど認識されていませんが、アメリカのAO入試は裏口入学と表裏一体なのです。『総合的に判断して』合否を決める入試と巨額の寄付金を受け入れる制度を併存させ、寄付してくれた人の子息を『総合的に判断して』合格させることでビジネスを回している。集めた寄付金で本当に有能な教員を雇ったり、困っている学生に奨学金を出したりしているわけで、要は大学の生態系を回すためのビジネスモデルなのです。そういった側面をしっかり認識し、よくよく考えてデザインしないと、表面的なまねだけではきれいな履歴書を抱きしめた中身の薄い学生を量産することになりかねません」

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