2021/11/16

MBAは武器になる リーダーのスタイルは自分流で

MBAは武器になります。異動先では学んだ知識をフルに使いました。たとえば何かを売るなら、売る場所や売るための機器、投資、システムの投資、かかる人件費などを全部算出して、本部とフランチャイズチェーン(FC)加盟店とにどう収益をもたらすか計算していくんです。何か大きい機器を買うとしたら、将来の社会を予測したうえで投資の回収の見通しについて考えるようなことも。アライアンスを結ぶ際の法務などについても学びました。

「世の中のためにあったらいいね」だけでなく、事業はちゃんと収益が出るモデルにしなければ継続できない。ローソンの場合、店舗の収益を上げられなければ、FC加盟店のオーナーさんの生活も成り立たなくなってしまいます。生活を支えていける事業をつくらないとダメなんだということが本当によく分かりました。そのために本部の人間が果たすべき役割の重さも感じました。

できなかったことや失敗もある。それを封印したいとは思わないという。むしろ「成長のステップ」にしていると話す山口さん

 ――失敗は封印せず、反すうして自分のステップにしている。

新規事業では失敗もしましたし、クローズしたものもあります。けれど、事業のクロージングまできっちりやったということが、結構自信になっているところもあります。周囲に迷惑をかけずに広げた風呂敷をちゃんと畳んだので。コロナ禍があったりマーケットが変わったり、失敗の原因は自分の責任ではないものもあります。ただ、そうした環境変化も含めてビジネスなのだと分かりました。後悔はありません。

「できた、できた」もいいけれど振り返れば同じくらい、できなかったことや失敗もある。それを封印したいとは思わないです。むしろ一つ一つ語れるように成長のステップにしちゃっていますね。失敗や怒られたことの方が勲章になっている。

ローソン時代、「店はつくったことがあるが保育園は誰もつくったことがない」というなかで保育施設の開設も担当しました。ただ、自分にとっては「できたからいいんです」となって語る内容がないのです。失敗したことの方が、後で反すうして分析して納得している。だから、「次にやるときに、この轍(てつ)は踏まない」とか少しは成長した状態で新たな取り組みに臨んでいけるのではないかと思っています。 

――MBAは「たくさん学んだ」というリーダーシップの発揮でも役立った。

過去に「もっと大きい声を出して、自分についてこいと言えないのか」と言われたことがあります。私はできませんと言いました。確かに、そういうリーダーを見てきました。けれど、自分が1つの部門を率いるようになったときに、それをやれと言われても、ちょっと抵抗があるし、自分じゃないなと思うところがある。

だから、「サーバント(執事)型リーダー」とか、最近はやっている「オーセンティック(信頼感のある)リーダーシップ」とか、リーダーシップにはこういう形もあるんだ、ということは勉強して学びました。MBAを取得した大学院の授業でも、リーダーシップに関する内容は自分を力づけてくれましたね。

特に人事から事業部門に管理職で異動したときは、部下の方が現場や最新動向をよく分かっている。だから、部下の力を最大限に引き出してやっていくようにしました。決めるのは私だし、何かあったら泥をかぶるのも私ですが、「何でも知っている」ということはないので。自己開示もして、私も弱音を吐くから、みんなも吐きやすかったようです。特に若い男性はプライベートも含めて悩みを共有してくれました。今も、リーダーシップについてはこのスタイルで考えています。

21年3月、ローソン銀行で今の仕事に就く前に「1度出向して、小さな組織を見ることをやってみたい」との希望は伝えていました。希望がかなったのかどうか分かりませんが、ローソンは社員数で5000人規模なのに対して、当行は役員を入れても200人未満。確かに小さな組織です。わりと情報がオープンで定期的に社長や役員から会社が目指している事業やその進捗を共有してもらえる場がある。一般社員も経営に参画できる文化があるのは、規模の違う組織を経験できて良かったことの1つです。

――後進の女性たちに「まずやってみよう」と提案する。

(ここまでの歩みを振り返って)管理職になるとは思いもしませんでした。ただ、管理職になるのを固辞するというのは私には意味が分からないです。昇格すれば、お給料も上がりますし(笑)。

すっごく大きいことをやらなければいけない訳でもないので、巡ってきたチャンスはちゃんとキャッチして、「やったらできる」を積み重ねていってみては。仮にうまくできなかったとしても、やった経験は次につながります。

(自分は)確固たる武器を持ち合わせていないし、この先も何が来るかは分からない。ただ、どの部署にいても事業を高めるための働き方をしていきたいというのが私の軸です。自分のなかでは60歳でひとつ線を引いていますが、それまでは今後も来るものをちゃんとキャッチする思いでいます。

(佐々木玲子)