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「失敗は勲章」ローソン銀出向 女性MBA管理職の転機

働く女性のキャリアスパイス(2)

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NIKKEI STYLE

結婚や出産で女性が職場から去っていったのは昔の話。ライフイベントも経ながら働き続けていくのが、令和の女性たちに多いワークスタイルだ。とはいえ、ロールモデルが身近にいなくて先行きが見通せなかったり、働き始めた頃とは違って「成長」を実感できなかったりで悩むことも。先輩女性たちはどんな体験をバネにキャリアを築いていったのだろうか。活躍する女性に、自身を今に導いた「あの頃」や迷いを脱する助けとなった「こんな言葉」を語ってもらう。

(1)「重要なのは行動」 エキナカ仕掛け人女性の原点は

ローソンはダイバーシティ(多様性)推進に積極的な企業だ。2005年から新卒採用で女性の採用を強化し、14年には事業所内保育施設を開設。子の名前入りどら焼き贈呈で祝福するユニークな試みで男性の育休取得にも力を入れ、その取得率は20年度で94%に達した。一連の取り組みにより、経済産業省などが女性の活躍推進で優れた取り組みの上場企業を毎年選ぶ「なでしこ銘柄」には、小売業で最多となる6度選定された。女性社員に占めるワーキングマザー比率は15年度から2割超に。その育休復帰で本社勤務第1号となったのは、今回ご登場いただく山口恭子さんだ。

◇     ◇     ◇

仕事はし続けるもの 性差ない採用も入社理由の1つ

――新卒で入ったローソンでは人事畑が長い。事業所内保育施設の開設も担当しダイバーシティの推進役を担った。事業部門を経て、21年3月から子会社のローソン銀行経営管理部シニアマネジャーに。「現職でも、やっていることは人事。ローソンでダイバーシティ推進をやっていたのもあって女性活躍の取り組みもこれからやりたいし、やらなければいけない」と話す。まずは入社当時から振り返ってもらった。

1993年に新卒でローソンに入社しました。コンビニエンスストアは大学生のときにいつも身近にあって、おにぎりやお菓子を買って友達と集まったときなどに使っていたので、すごく親和性がありました。

ローソンは当時から、(補佐的な)一般職と(幹部候補ともなる)総合職に分けて採るといったコース別採用をしていなかった。男女で入り口を分けないフェアな採用がうれしかったのも理由の1つです。新入社員は基本、店舗からキャリアをスタートします。そうした現場感みたいなものも好きだった。

仕事はし続けるものだと思っていました。両親は富山県の出身。私自身も中学で父が東京に転勤するまで富山で過ごしました。周囲には共働き家庭が多く、ご近所も同級生もそれが当たり前のように進学するといった状況だった。ローソンは入り口がフェアだから、結婚しても「寿退社」とかしなくていいのかなと思っていました。

――店舗勤務などを経て結婚し、99年に出産。本社で育休の前例はなかった。育休を申し出た際に職場で驚かれたことも、いまとなっては懐かしい思い出だ。

(育休を)取りますといったら、びっくりされて。「そんなことできるの?」と。当時は20代で給料も少なかった。「保育園て高いっていうじゃない。あなたの給料、ほとんど保育のお金で消えちゃうのに意味があるの?」と心配してくれた方も。

意味があるかどうかも分からないし、保育園に入れるかどうかも分からない。何もよく分からないので「とにかく産んでみます」みたいな感じで。「居ていいですか?」といったら、分かりましたということで……。人事の方も初めてだったから、対応でバタバタされたと思います。

ちょうどその頃、大手メーカーで総合職として働く義姉が育休から職場に復帰した頃でした。義姉の勤め先では(育休復帰が)当たり前だったみたいです。外の会社はそうなっているんだって思って。義姉が「一緒にがんばろうね」と言ってくれたのも支えになりました。

「時短だから」 内なるバリア破り育ててくれた上司

――2001年の育休復帰後、人事畑へ。女性の活躍を推進するため、13年に始めた育休中社員向けの研修では、最初は緩やかであってもキャリアビジョンを持つように話し「それなりの人で戻ってきては困る。成果を出そう」と期待を込めて厳しいことも伝えてきた。だが、実は「育児のための時短勤務で働いているし、(できないことがあったって)しょうがないんだもん」と思っていた時期も。内なるバリアを破り働く基盤をもたらしてくれたのは、いまは社外で活躍する女性上司の一喝だった。

育休復帰後は時短勤務をしている負い目がありました。「すみません。子どもが熱を出したので」と仕事を割り振りしてカバーしてもらい帰宅したことも。そんな30代半ば頃のことです。知らず知らずに「時短なんだし」と甘んじて、ひとごとのように仕事をしていた自分の目を覚ましてくれた方がいます。当時の部長であった女性の上司の方です。

その頃は中途採用のほか、オフィス内のパートタイムの方や派遣社員の方の採用を担当していました。人がなかなか充足しなくて、様々な部門から「人をくれ」と要望が相次ぎ、毎日追いつかないような状況でした。

ほかの仕事もあって、仕事量だけは時短のなかでも大変だった。さらに人の配置でもいろいろあって、部門から要望があっても「しょうがないでしょう、このご時世だから」とか、派遣会社から連絡が来ないからまだいいだろうとか、状況報告を先延ばしにしていたんです。そんなとき、皆がいる自席で「他部門に迷惑をかけている」と、その方にすごく怒られました。

「なんでなの。なんでなの」。あまりの剣幕(けんまく)に、横にいた本部長が「まあまあ、いいじゃないか」ととりなそうとしてくれましたが、「いや、よくない」と。「これ、どうなってるの。なんでできていないの? 期限を過ぎているじゃない」。自分が悪いのですが、なんの言い訳もできないくらいに怒られました。

人事は他部門に対して依頼や調整が多いです。その上司はとても丁寧な方で、他部門とのコミュニケーションを大切にしていらっしゃいました。私は当時、「時短の自分が担当するのはちっちゃい仕事だから、まあいいや」と思っているところがあったのだと思います。その1件で、ちっちゃかろうが大きかろうが、自分の仕事は責任を持ってやらなければいけないという当たり前のことに改めて気づかされました。

――彼女とは「今もつながっています」。仕事は時間でなく成果、ということを身をもって示してくれたのも彼女だった。

当時の私は、子どもがいることは働き方に制限がかかるからマイナスになると考えていました。けれど、その方はそうしたバイアスがなかったのでしょう。面談でも「これとこれとこれはしっかりやろう。これだけできたら評価はAです」と時間ではなく、成果でバシッと出せばいいと説いてくれました。

叱ったら叱りっぱなしじゃなくて、「ほらできたじゃない」「さすがだね」といった言葉もかけて育ててくださいました。その後の上司が、子育ては育成の観点で人をみるのにプラスになっていると褒めてくださったことも。おかげで「私なんか」という気持ちはなくなりました。

――目が覚めた一件にはおまけがある。15年に人事企画部長に就任。顧問となった当時の本部長が東京・銀座のシャンパンバーで祝う会を開いてくれた。そのときだ

「申し訳なかった」と頭を下げられたのです。「ぼくはあなたのお子さんが小さいときに『多分、山口さんは子育てに時間を取りたいだろう』と勝手におもんぱかって、ぼくのサポートとか軽めの仕事を実は与えていました。それでムダな時間を過ごさせてしまったことを本当に申し訳なかったと思っている」と。

私自身はキャリアロスになったとか全く思っていませんでした。それでも、その方はご自身のアンコンシャスバイアス(無意識の偏見)に気づかれたようで、実は部長就任祝いよりおわびの会を開きたいと思っていらしたとか。「もう部長になったんだから、ここからは突っ走りなさい」と応援の言葉をかけてくださいました。その方にも折々、近況報告をしています。歴代上司を含め人間関係には本当に恵まれました。

――「学び」でも自身を磨いてきた。内なるバリアを破ってくれた女性上司に「面接で話を聞き出すのがうまい」と褒められたことから、コミュニケーションスキルを磨こうと講座に通い、国家資格であるキャリアコンサルタントの資格保有者に。ローソン時代は部長職向け選抜研修で一橋大学大学院のMBA(経営学修士号)カリキュラムからの抜粋講座に参加。より体系的に知識を習得したいと18年4月から中央大学大学院戦略経営研究科で学び、MBAも取得した。図らずも在学中の19年、人事畑からラストワンマイル事業本部(現・新規事業本部)の部長に異動する。

そろそろ異動があるだろうなとは思っていましたけれど全く畑違い。事業をイチからつくるような仕事でした。あのとき学んでいなくて、スキルや武器を持ち合わせていなかったら、本当に何もできなかったと思う。大学院の先生や仲間たちは、学びを生かせるいいチャンスじゃないかと応援してくれました。

MBAは武器になる リーダーのスタイルは自分流で

MBAは武器になります。異動先では学んだ知識をフルに使いました。たとえば何かを売るなら、売る場所や売るための機器、投資、システムの投資、かかる人件費などを全部算出して、本部とフランチャイズチェーン(FC)加盟店とにどう収益をもたらすか計算していくんです。何か大きい機器を買うとしたら、将来の社会を予測したうえで投資の回収の見通しについて考えるようなことも。アライアンスを結ぶ際の法務などについても学びました。

「世の中のためにあったらいいね」だけでなく、事業はちゃんと収益が出るモデルにしなければ継続できない。ローソンの場合、店舗の収益を上げられなければ、FC加盟店のオーナーさんの生活も成り立たなくなってしまいます。生活を支えていける事業をつくらないとダメなんだということが本当によく分かりました。そのために本部の人間が果たすべき役割の重さも感じました。

 ――失敗は封印せず、反すうして自分のステップにしている。

新規事業では失敗もしましたし、クローズしたものもあります。けれど、事業のクロージングまできっちりやったということが、結構自信になっているところもあります。周囲に迷惑をかけずに広げた風呂敷をちゃんと畳んだので。コロナ禍があったりマーケットが変わったり、失敗の原因は自分の責任ではないものもあります。ただ、そうした環境変化も含めてビジネスなのだと分かりました。後悔はありません。

「できた、できた」もいいけれど振り返れば同じくらい、できなかったことや失敗もある。それを封印したいとは思わないです。むしろ一つ一つ語れるように成長のステップにしちゃっていますね。失敗や怒られたことの方が勲章になっている。

ローソン時代、「店はつくったことがあるが保育園は誰もつくったことがない」というなかで保育施設の開設も担当しました。ただ、自分にとっては「できたからいいんです」となって語る内容がないのです。失敗したことの方が、後で反すうして分析して納得している。だから、「次にやるときに、この轍(てつ)は踏まない」とか少しは成長した状態で新たな取り組みに臨んでいけるのではないかと思っています。 

――MBAは「たくさん学んだ」というリーダーシップの発揮でも役立った。

過去に「もっと大きい声を出して、自分についてこいと言えないのか」と言われたことがあります。私はできませんと言いました。確かに、そういうリーダーを見てきました。けれど、自分が1つの部門を率いるようになったときに、それをやれと言われても、ちょっと抵抗があるし、自分じゃないなと思うところがある。

だから、「サーバント(執事)型リーダー」とか、最近はやっている「オーセンティック(信頼感のある)リーダーシップ」とか、リーダーシップにはこういう形もあるんだ、ということは勉強して学びました。MBAを取得した大学院の授業でも、リーダーシップに関する内容は自分を力づけてくれましたね。

特に人事から事業部門に管理職で異動したときは、部下の方が現場や最新動向をよく分かっている。だから、部下の力を最大限に引き出してやっていくようにしました。決めるのは私だし、何かあったら泥をかぶるのも私ですが、「何でも知っている」ということはないので。自己開示もして、私も弱音を吐くから、みんなも吐きやすかったようです。特に若い男性はプライベートも含めて悩みを共有してくれました。今も、リーダーシップについてはこのスタイルで考えています。

21年3月、ローソン銀行で今の仕事に就く前に「1度出向して、小さな組織を見ることをやってみたい」との希望は伝えていました。希望がかなったのかどうか分かりませんが、ローソンは社員数で5000人規模なのに対して、当行は役員を入れても200人未満。確かに小さな組織です。わりと情報がオープンで定期的に社長や役員から会社が目指している事業やその進捗を共有してもらえる場がある。一般社員も経営に参画できる文化があるのは、規模の違う組織を経験できて良かったことの1つです。

――後進の女性たちに「まずやってみよう」と提案する。

(ここまでの歩みを振り返って)管理職になるとは思いもしませんでした。ただ、管理職になるのを固辞するというのは私には意味が分からないです。昇格すれば、お給料も上がりますし(笑)。

すっごく大きいことをやらなければいけない訳でもないので、巡ってきたチャンスはちゃんとキャッチして、「やったらできる」を積み重ねていってみては。仮にうまくできなかったとしても、やった経験は次につながります。

(自分は)確固たる武器を持ち合わせていないし、この先も何が来るかは分からない。ただ、どの部署にいても事業を高めるための働き方をしていきたいというのが私の軸です。自分のなかでは60歳でひとつ線を引いていますが、それまでは今後も来るものをちゃんとキャッチする思いでいます。

(佐々木玲子)

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