伝統と新技融合、フレンチに新風吹き込む 東京・経堂

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2022/1/17
「プレジール」のアントレ「シャラン鴨のロースト 12種類のスパイスのラケ」

小田急線の経堂駅北口から続く「経堂すずらん通り商店街」を歩くこと約8分。閑静な住宅街に2021年にオープンしたのが、フランス料理店「Coctura(コクトゥーラ)」だ。

シンプルでクラシックな外観は敷居の高さを感じさせず、誰でも気軽に利用できる雰囲気。ディナーコースは要予約だが、ディナーでも、カウンター席での食事やランチは予約なしで利用することができる。

店内はオープンキッチンのカウンター席と、地下は親しい仲間との食事が楽しめるテーブル席で構成。カウンターに座れば、シェフ・田中俊資さんとの会話も楽しめる。

1階のカジュアルな雰囲気とは異なり、地下は特別な時間を過ごすのにふさわしいラグジュアリーな空間が広がる。デート利用からグループでの会食など、さまざまなシーンで思い出に残る食事ができること間違いなし。

「コクトゥーラ」の指揮をとる田中さんの歴史は「ヨコハマ グランド インターコンチネンタル」に始まる。ホテルでの修業後、27歳で渡仏しパリの「ラ・ターブル・ダンヴェール」やニームの「アレクサンドル」など、ミシュラン星付きレストランで腕を磨き込んだ。

帰国後は東京・表参道の「ブノワ」のオープニングに参加し、フランス料理の中核を担うソース部門のシェフとして従事する。

その後、東京・駒沢のフレンチレストラン「オーボナクイユ」(現在は閉店)で独立。オーナーシェフとして14年間腕を振るってきたが、建物の老朽化等により移転を考え、経堂を新たな舞台として選択した。

「『オーボナクイユ』は、トラディショナルなフランス料理を提供していました。今は、伝統的なフランス料理の技法は変えず、表現方法を変えることでクラシックとモダンの融合を提案しています」と田中さん。

店名のコクトゥーラは、ラテン語で「融合」の意。時代とともに嗜好やトレンドが変化するのと同じように、伝統を重んじつつ新しいテクニックを取り入れ、新たなフランス料理を生み出している。

とくに日本の高品質で四季が感じられる食材を活かし、フランス料理の概念にとらわれない食材の組み合わせを提案。料理が一皿ずつ提供されるたびに、驚きと感動を与えてくれる。

コースは「セゾン」と「プレジール」の2種を用意。旬の食材を扱うため、内容は都度変わっていく。

取材時の「プレジール」のひと品「秋刀魚とフォアグラのオペラ仕立て」

取材時の「プレジール」の1品「秋刀魚(サンマ)とフォアグラのオペラ(フランス発祥のケーキ)仕立て」は、一見するとケーキのような見た目に驚くオードブル。

オペラの正体は、桜チップでスモークしたサンマをフォアグラのテリーヌでサンドし、上にバルサミコ酢のジュレをかけたもの。濃厚なフォアグラにサンマのうま味とほどよい苦みが混ざり合い、バルサミコ酢の酸味がアクセントとなる。

周りにはサクサクとした食感の変化を提案する、オニオンのチュイル(フランスの焼き菓子)を。濃厚なフォアグラの口直しとして、さっぱりとしたサラダを添える。姫キュウリやチコリ、アンディーブ、ナスタチウムなどを使い、さまざまな食感、甘み、酸味、苦みなどの変化が楽しめる。

「フォアグラのテリーヌは、クラシックスタイルのフランス料理。それをオペラ仕立てにすることで、モダンな表現にしました」(田中さん)