ストレスが解消されず、適切な対処がなされないと、だいたい次のような段階で悪化していき、仕事や生活に影響が出てきます。そして最終的には「自律神経失調症」や「抑うつ状態」、「適応障害」などと診断されるケースも少なくありません。
(1)仕事のことを頻繁に考えてしまい、プライベートの時間を楽しんだりリラックスしたりできなくなってくる。
(2)夜寝るときにも仕事が頭から離れず、寝つきが悪くなったり、寝ついても仕事の夢を見て途中で目覚めたり、早朝に目覚めて眠れなくなったりするなど、睡眠障害の症状が出てくる。
(3)睡眠障害が頻繁に起こるようになり、十分に睡眠で休息がとれなくなる。朝起きても疲れがとれず倦怠(けんたい)感が強くなる。
(4)体がだるく頭がすっきりしないため、感情の制御がうまくいかなくなり、イライラしたり落ち込んだりアップダウンが激しくなっていく。集中力に影響が出てきて、ケアレスミスが発生しやすくなる。
(5)十分に休めず疲労が蓄積するため、体調不良も出てくる。肩こりや首こりを感じやすくなり頭痛が出やすくなる、胃もたれによる食欲低下、便秘や下痢、腹痛などの消化器系の不調が出てくる場合も多い。めまい感や動悸(どうき)、息苦しさ、原因不明の身体の痛みなどを感じる人もいる。
(6)上記のような睡眠障害や、心身の不調が悪化していくため、仕事に対する意欲・集中力が失われたり、人間関係が悪化したりして、憂鬱な気分にさいなまれるようになる。
全ての人がこの順番通りに進行するわけではありませんが、過緊張状態を放置していると、睡眠障害に加えて、(4)(5)(6)あたりの症状が出て心療内科や精神科を受診し、何らかの診断が付く場合が多いように思います。
今回のお悩み相談は、まさに(3)の睡眠障害と、(4)の感情のアップダウンが激しくなる症状が出ていますね。
ストレスから眠れなくなる日が続けば医師に相談を
もし寝つきが悪くなる「入眠障害」や、夜中に何度も起きて熟睡できなくなる「中途覚醒」の症状が、週に約2回以上あるようならば、心療内科か精神科で相談したほうがよいでしょう[注2]。
一般的に、働く人が心身の疲れをとるためには、最低でも6時間以上の連続した睡眠が必要とされています(理想は7~8時間の連続睡眠)。
途中で何度も目覚めているということは、深い睡眠がとれず、心身のメンテナンスが完了しないまま起床し、脳や体に疲れを蓄積させてしまっていることになります。
この状態を放置するのは危険であり、仕事上のストレスが劇的に改善されない限り、心身の症状はどんどん悪化して進んでいきます。
集中力が落ちて大きなミスに発展したり、感情の制御ができず人間関係のトラブルが勃発したりして、本格的なうつ状態になってしまう人もいます。また、体調不良が続いて仕事ができなくなる人もいます。
このような負のスパイラルに陥らないためにも、睡眠障害が頻繁になってきた段階で、心療内科や精神科を思い切って受診したほうがよいでしょう。
もし心療内科や精神科の敷居が高いと思うようであれば、まずは内科でも構いません。ぐっすりと深く眠れる方法を医師に相談してみましょう。
[注2]厳密には、心療内科はストレスなどが要因で体に現れる症状を扱い、精神科はうつや統合失調症など心の病気を扱う。しかし町のクリニックでは、精神科医が便宜上、心療内科も標榜していることが多い