「DXにおける組織変革の側面は、社内の啓蒙活動から日常の問い合わせ対応まで、デジタルとはかけ離れた非常に泥臭い活動が重要なんだ。泥臭いことも厭わない明るい人やチームが、社内のコミットメントを引き出すのに成功している。だから岬さん、この難度の高い状況をいかに自分事として楽しめるかが大事だよ」
(第2章 デジタル化をする「本当の」意味 56ページ)

DXは第二の創業

本書に登場する洋菓子チェーンの場合、最も大切にしていたのは「お菓子を通じて人を幸せにすること」でした。これは、ドラッガーの第1の問いの答えにもつながります。主人公たちは、社長に話を聞く中で店の歴史や創業の思いを再認識し、今の時代に合わせた形でそのミッションを達成するために、店舗間での連絡をスムーズにいかせる連絡ツール「スラック」の導入や、ネット予約の受け付けを開始しました。

コロナ禍などによって、既存の販売方法に大きく変化が迫られるなか、抵抗を示す人もいます。現場の反発も受け入れ、丁寧な話し合いと素早く成果を出し続けるなかで、「DXは第二の創業だ」と主人公は気づいていきます。

「故きを温ねて新しきを知るって諺があるでしょ。昔のことを研究して、そこから新しい道理や知識を得るという意味の。DXをやってると、この温故知新がすごく重要なんだよ。実は、DXというのは今やっていることをデジタル化しようと考えるから難しいという側面があるんだよね。だって、デジタルじゃない世界から積み上げてきたモノゴトがたくさんあるから。
 でも、もし創業者が今の時代に生きてて、その人がもう一回このデジタル社会で起業したら何をするのか? これがDXの本質。要するに、デジタルを前提にしたその会社や組織における第二の創業こそがDXなんだよ」
(第5章 創業者の想いを知る 164ページ)

こうした改革は一朝一夕にはできません。しかし、変化に対してポジティブでない人たちを巻き込むためには、最短で最初のステップの成果をだすことが重要になってきます。著者は、それを90日と定めました。

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自ら仕掛けるか、変化を余儀なくされるか