一度に食べ過ぎず、細く長い付き合いに

ニンニクの花芽。通常の栽培では鱗茎を太らせるために早い段階で茎を切ってしまう。それを利用するのがいわゆる「ニンニクの芽」

さて、気になるのはニンニクの栄養と、抵抗力アップに本当に効果があるのかどうか、というところだ。

ニンニクの栄養・機能面の特徴として、多くの資料が第一に指摘するのは、アリインという物質を多く含むということだ。そして、ニンニクをスライスしたりすりおろしたりすることでこのアリインがアリシンというものに変化するという。

アリインはビタミンB1の吸収をよくする作用があり、ビタミンB1はブドウ糖をエネルギーとして活用するのを促進する。ニンニクを食べると元気になったように感じるのは、このような仕組みのために筋肉や脳にエネルギーが供給されることによると言えそうだ。

栄養面ではもう一つ、ビタミンB6を多く含むという特徴がある。これはたんぱく質の分解を助ける作用があり、また、免疫機能を正常に維持する働きと、皮膚の抵抗力を増すためにも必要だという。これを踏まえれば、適量のニンニクは、抵抗力維持につながると言えそうだ。

ただし、前述のアリインのもう一つの特徴に注意する必要がある。アリインは強い抗菌・抗かび作用を持つという。ニンニクを食べ過ぎてアリインを過剰に摂ると、腸内細菌も殺してしまい、そのことでお腹の調子が悪くなったり、体調を崩すことがあるので注意が必要だ。近年、腸内細菌叢(腸内フローラ)が正常にあることが抵抗力や健康に重要という研究が多く発表されているので、ニンニクを食べ過ぎて腸内細菌を減らすようなことは避けたほうがいいだろう。

そのような点から、ニンニクの摂取は、生の状態では1日1片、加熱での利用の場合も1日2~3片にとどめておいたほうがよさそうだ。

健康食品として注目されたこともある黒ニンニクは、生のニンニクを高温・高湿の状態で貯蔵することで変化させたもの。軟らかく甘みがあって食べやすいが、やはり食べ過ぎには注意

料理としても、イタリアンのシェフをはじめ西洋料理の専門家の多く、また欧米の料理系YouTuberの多くも、ニンニクの風味を強くさせすぎず、ほんのりと香りをつけて楽しむことを共通して推奨している。

ある料理動画のシェフが「background flavor」という言葉を使っているのが印象的だ。主役にはしないけれども、しかしそれがあることで全体が豊かな印象を持つといったことだろう。体調を崩さず、ニンニクに飽きず、適量を使い続けることが、ニンニクを長く利用してきた地域の人々の知恵のようだ。

(香雪社 斎藤訓之)

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